2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K12182
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
三木 那由他 大阪大学, 文学研究科, 助教 (40727088)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 哲学 / 分析哲学 / 話し手の意味 / 意図基盤意味論 |
Outline of Annual Research Achievements |
話し手の意味に関する共同主義的プラグマティズムという枠組みを構築するための基礎的な研究をおこなった。 第一に話し手の意味に関して、話し手の意図など、話し手による何かの表象を用いてその分析を与えるということは不可能であるという結論を導く論証を発見し、2018年度日本科学哲学会大会にて公表した。そこでは、まず話し手の意味の分析において、話し手が何かを意味するからには、話し手が何かを意味しているという事実はおおやけのものとなっていなければならないという「話し手の意味の透明性」という原則が話し手の意味の分析でこれまで採用されており、またこれからも採用すべきであるということを指摘した。これに加えて、従来の理論では、話し手の発話の目的となる事柄を話し手が心的に表象する(典型的にはそれを意図する)ということでもって、話し手の意味の分析を与えるという「表象主義」と私が呼ぶものが採用されていた。しかしこれらをともに採用したならば、分析の具体的な細部に依らず循環が生じ、これまで「意図の無限後退問題」と呼ばれてきた問題が避けようのない形で現れる、そのことを示す論証を提示した。これにより、話し手が何かを表象するというモデルに代えて、よりプラグマティックな立場を採用する動機づけを与えた。 第二に、集合的な心理状態を利用した話し手の意味の分析を用いた場合でも、従来の理論と同等以上に話し手の意味と話し手の心理との直観的に想定される関係を説明できるということを明らかにした。これに関しては、待兼山論叢(哲学篇)第52号掲載の「話し手の意味は話し手の心理にいかに関係しているのか?」にて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、(1)コミュニケーションの成立からの帰結とはどのようなものか、(2)話し手の意味とコミュニケーションの成立からの帰結との関係を、表象ではなくコミットメントという概念で結びつけたなら、どのように捉えられるのかを課題として、第一年度には「コミュニケーションの成立からの帰結について、従来の意図基盤意味論の論者たちが扱ってきた事例をTaylor (1980)の観点から取り直すことで検討する」という目標を掲げていた。 これに関してまだ成果を公開できていないものの、すでに一定の解答を得て、現在公開のための準備をおこなっている。それに加えて第二年度の「共同的コミットメント概念にも同区集合的志向性の理論を第一年度の成果へと適用することで、コミュニケーションの成立からの帰結を集合的志向性の枠組みのもとで再定式化する」という目標についても十分な見通しを立てたうえで、待兼山論叢(哲学篇)第52号掲載の「話し手の意味は話し手の心理といかに関係しているのか?」にて公表している。 こうしたことから、当初は二年間かけて進める予定だったのと同程度の研究が進展しているものと評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
第一年度と第二年度で遂行する予定だった課題がおおむね第一年度にて遂行できたため、その成果の公表を急ぐとともに、部分的に計画を早めて第三年度の課題「Brandom (194)のプラグマティズムに共同的コミットメントという概念を組み込むことで、第二年度の成果とプラグマティズムを接続する枠組みを形成する」に取りかかる予定である。 それに加えて、計画遂行にいくらかの余裕ができたことを踏まえて、フィクション、とりわけ舞台上での発話などといった応用的な事例を検討しながら、本研究にて提示する共同主義的プラグマティズムの立場の適用範囲を確認するという作業も遂行するつもりである。
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Causes of Carryover |
当初、研究発表等に用いるラップトップPCを購入する予定だったが、減額後の予算だとそれだけの余裕がないと判断し、代わりに研究資料の購入に当てた。その差額として次年度使用額が生じた。
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