2021 Fiscal Year Annual Research Report
Communitarian Pragmatism of Speaker Meaning
Project/Area Number |
18K12182
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
三木 那由他 大阪大学, 文学研究科, 講師 (40727088)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 話し手の意味 / コミュニケーション / 語用論 / 共同性基盤意味論 / 意図基盤意味論 / 共同行為 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、話し手の意味に関する共同主義的プラグマティズムというアプローチの構築を目指していた。最終年度である2021年度には、前年度までに構築した話し手の意味に関する新たな理論を精緻化子、話し手の意味に関する事例がうまく扱えることを確認する、ということを目標としていた。しかし研究全体の進展が予定よりスムーズに進み、当初の研究目標はすでに達成されていたため、今年度は本研究と実質的に関連しつつもさらに応用的な研究として、ハラスメントや差別の関わるようなコミュニケーション上の現象への理論の応用可能性を探求した。 本研究で構築・提案したのは共同性基盤意味論という枠組みであり、それによれば話し手が何かを意味するという行為は話し手の意図によってその本質が捉えられるようなものではなく、話し手と聞き手のあいだでの共同的なコミットメントの構築という観点から理解されるべきものだとされている。そのうえで、共同的コミットメントの構築のされ方にハラスメントや差別が関与する可能性を検討した。具体的には、共同性基盤意味論の基礎をなしている共同行為の理論を取り上げ、そこにおいて差別やハラスメントについて考察するための概念を提案することを試みた。力関係においてアンバランスな人々がひとつの共同行為に参加する際に共同行為の成り行きにその力関係が影響するありさまを分析することが具体的には目指されたが、その結果として共同行為の成り行きが必ずしも共同行為開始時点に共有された目的によっては決定されないということを示す事例を発見した。その成果は英語論文のかたちで現在公刊に向けて準備中である。 また2021年度にはこれまでのコミュニケーション研究の成果の一部として、ポール・グライスの哲学説に関する再検討もおこない、その成果を公刊することができた。
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