2018 Fiscal Year Research-status Report
Methodological Foundations of Contemporary Phenomenology. From Historical and Systematic Perspectives
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18K12186
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
植村 玄輝 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (40727864)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 現象学 / 古典的現象学 / 現代現象学 / 行為 / 共同行為 / 動機づけ / 哲学方法論 / 超越論的観念論 |
Outline of Annual Research Achievements |
(A1)フッサールの超越論的観念論に関する研究について。研究そのものとは無関係の事情により予定されていたルーヴァン(ベルギー王国)のフッサール文庫での研究調査を延期し、未刊行テクストを用いずに行うことができる範囲の研究に専念した。具体的には、『イデーンI』をとりわけ第2篇に着目して再度精査したほか、同著に関する二次文献の検討を行なった。また、本研究課題と深い関係にあるフッサールの1905年講義に関する調査もおこなった。これによって、フッサールの超越論的観念論に関する文献調査は、フッサール文庫で閲覧予定の1912年講義をのぞいてほぼすべて完了したことになる。また、『論理学研究』に関する申請者のこれまでの研究も再検討する機会を得ることもできた。これらの研究の成果は、講演および学術論文のかたちですでに発信されている。
(B1)現象学的な社会哲学の研究のための下準備として、行為の現象学に関する研究を行なった。これは、共同行為の問題が現象学的な社会哲学における一大トピックを形成していることによる。この研究によって、行為が持つ経験としての側面について、申請者のこれまでの研究に不足して議論を補ったほか、今後の研究に必要な課題をあぶり出すこともできた。また、初期の現象学者ゲルダ・ヴァルターにとりわけ着目して、共同行為や社会的作用に関する研究も行なった。これによって、「われわれ」に関する現象学的な議論が持つ可能性と限界について、大まかな見通しを得ることができた。これらの研究の成果も、講演および学術論文のかたちですでに発信されている。
そのほか、本研究課題をより広い文脈のなかに置くことを目的として、哲学と日常言語の関係を主題とした講演会を開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のように、予定されていたルーヴァンのフッサール文庫における文献調査を延期したため、フッサールの超越論的観念論についての研究に若干の遅れが出ている。その一方で。社会の現象学に関する研究については、当初の見込まれていたよりもはやい進展がみられる。そのため、全体としては概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要でも述べたように。フッサールの超越論的観念論に関する研究については、フッサール文庫での研究調査以外に必要な文献調査をほぼ終えている。そのため、2019年度における同文庫での文献調査によって遅れを取り戻すことができることが見込まれる。また、社会の現象学に関しては、ここまでの研究によってその存在に気づかされた、初期現象学における関連文献を調査するという課題が生じている。この課題に対処するために、共同研究者のAlessandro Salice氏との協力体制をより深めたい。
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Causes of Carryover |
当初予定されていたフッサール文庫(ルーヴァン、ベルギー王国)での文献調査を延期したため、そのための出張費を次年度に繰り越した。
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