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2020 Fiscal Year Research-status Report

カントの批判哲学とバウムガルテンの「学問基礎論としての形而上学」との対決

Research Project

Project/Area Number 18K12190
Research InstitutionThe University of Electro-Communications

Principal Investigator

増山 浩人  電気通信大学, 情報理工学域, 准教授 (30733331)

Project Period (FY) 2018-04-01 – 2022-03-31
Keywordsカント / バウムガルテン / マイアー / ヴォルフ / ライプニッツ / カテゴリー / 存在論 / 形而上学
Outline of Annual Research Achievements

2020年度はバウムガルテンの存在論・世界論とカントのカテゴリー論の比較研究を継続した。さらに、バウムガルテンとカントの形而上学の時代的背景を明らかにするためにヴォルフの『ラテン語存在論』に関する研究に着手した。具体的な成果は以下の通りである。
1)昨年度行ったカントの相互性のカテゴリーに関する研究の追加研究を行った。具体的には、カントの論理学講義の教科書であった『論理学綱要』におけるマイアーの選言判断論を前批判期カント、批判期カントのものと比較検討した。その結果、批判期カントの選言判断論は選言項と主語との関係を「部分‐全体」関係とみなす哲学史上異色のものであったことが判明した。このことから、『純粋理性批判』において選言判断の形式から相互性のカテゴリーを導出するカントの手法がこの独自の選言判断論に支えられていること、それゆえに時代を超えた普遍性を持ちえないことを裏付けた。以上の点について論文を作成し、『ヘーゲル哲学研究』(日本ヘーゲル学会)に寄稿した。
2)『ラテン語存在論』において、ヴォルフが「理由」を「存在理由」、「生成理由」、「認識理由」の三通りに区別した上で、「生成理由」を含むものを「原因」と呼んでいることを確認できた。このことから以下の三点を明らかにした。a.ヴォルフにとって「原因」は「質料因」、「形相因」、「作用因」、「目的因」の全てを意味すること、 b. 形而上学と他の学の基礎づけ関係をヴォルフは「認識理由」とその帰結間の関係として位置づけていたこと、c. ヴォルフによる「理由」と「原因」の区別をバウムガルテンとカントも大枠では継承していたこと。以上の成果は日本ライプニッツ協会第12回研究大会で発表した。その発表原稿を大幅に改稿した論文は学習院大学の酒井潔教授退職記念論集(工作舎、2022年出版予定)において公開される予定である。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

4: Progress in research has been delayed.

Reason

新型コロナウィルス感染拡大に対応するため、オンライン授業の準備・運営に膨大な時間が必要であった。その結果、2020年度は当初予定していたよりもきわめて少ない時間しか研究に従事できなかった。さらに、新型コロナウィルス感染症は海外渡航や国内学会の対面での参加の機会をも奪い去った。それに伴い、文献収集や人的交流の機会も劇的に減少してしまった。
確かに、そのような未曾有の状況の中でも「研究実績の概要」で記した研究活動を辛うじて行うことができた。しかし、2019年度から続く研究時間の大幅減少のため、当初予定していた『純粋理性批判』「超越論的方法論」におけるカントのバウムガルテン批判の研究には全く手を付けられていない。以上の状況を踏まえ、現在までの進捗状況は「遅れている」と判断する。

Strategy for Future Research Activity

以上の状況に対応するために、2021年1月に補助事業期間延長の申請を行い、研究期間を2022年3月まで延長した。しかし、2021年5月になっても、新型コロナウィルス感染拡大が収束する気配は全くない。そのため、本研究事業の終了期間までに海外渡航や対面での国内学会参加を行うことは不可能である。それに加え、オンライン授業の実施に伴う研究時間の減少も依然として続いている。
以上の悪状況にもかかわらず、本研究事業は2021年度末で終了する。そのため、当初予定していた研究計画を縮小せざるをえない。具体的には、世界と神という特殊形而上学の対象の導出の仕方に関するバウムガルテンとカントの立場の相違を示すという課題に残り全ての研究時間を投入する。このことによって、カテゴリーと理念を区別するカントの立場がバウムガルテンの「学問基礎論としての形而上学」の問題点をどのように解決しているのかを明らかにする。2021年度前半期には、国内のバウムガルテン研究者との共同研究を行いつつ、バウムガルテンによる世界概念の導出に関する論文を作成する。さらに2021年度後半期にはカントの理念論に関する論文を作成する。その上で、2021年度末までにこの二つの論文を現在編者として参加しているドイツ認識論史に関する論集に寄稿する。

Causes of Carryover

次年度使用額が生じた理由は新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け、海外渡航と国内出張が中止になったことによる。現在の状況を考慮すると、2021年度内に海外渡航を行うのは難しいと考えられる。そのために発生した余剰額は研究に必要な書籍、その他インフラを整えるために使用する予定である。

  • Research Products

    (2 results)

All 2020

All Journal Article (1 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] 世界への接近 ――カントにおける相互性のカテゴリーの役割――2020

    • Author(s)
      増山浩人
    • Journal Title

      『ヘーゲル哲学研究』

      Volume: 26 Pages: 86-98

  • [Presentation] ヴォルフにおける「理由」と「原因」の区別について2020

    • Author(s)
      増山浩人
    • Organizer
      日本ライプニッツ協会第12回研究大会

URL: 

Published: 2021-12-27  

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