2020 Fiscal Year Research-status Report
A Philosophy of Language Approach to Understanding Hate Speech
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18K12194
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
和泉 悠 南山大学, 人文学部, 准教授 (10769649)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 言語哲学 / 倫理学 / 意味論 / 語用論 / ヘイト・スピーチ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ヘイト・スピーチを中心とする、市民社会において不信と断絶を生む言語活動を、言語哲学とその関連分野の研究手法を用いて分析し、包括的な理解を与えることである。 2020年度には、単著論文を3つ、共著論文を2つ刊行した。また、国際研究会において1回、国内研究会・学会において3回研究発表を行なった(うち共同発表は1件である)。 前年度は、哲学や言語学における既存の研究を踏まえ、特に理論的に現象を記述し、少数の具体例に対して、深い理解を与えるような研究を中心的に行なった。関連して、本年度に刊行された研究成果には、理論家が言語の意味内容をどのように研究すべきなのか、という方法論的な考察や、日本語表現の意味についての、基礎的な研究が含まれる。 本年度は、これまでに得られた理論的理解を踏まえ、SNS上など、インターネットにおける言語使用についての探究を開始した。前年度からの計画通り、データサイエンスや自然言語処理の専門家と協力し、究極的にはヘイト・スピーチ自動検出技術の発展を目指し、ツイッターなどSNSを利用した、日本語ヘイト・スピーチデータセットの構築を進めた。 どのようにデータを収集するのか、収集されたデータを誰がどのようにラベルづけするのか、データを適切にラベルづけする作業のためには、どのようなガイドラインが設定されるべきか、といった課題に一から取り組み、試作のデータセットを構築した。その結果は国内学会において発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度が、当初、本課題の最終年度であった。しかし、2020年度においては、感染症の世界的流行により、十分に研究を総括する時間と機会を失ってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、前年度の試作を行なった日本語ヘイト・スピーチデータセットの拡張を行い、そうした技術的課題に取り組むことの理論的含意を探る。第一に、試作データセットを作成した経験を生かし、より大規模な形で、データ収集、ラベルづけ作業を行う。これまでに蓄積された作業過程についての知見により、前年度よりもより効率的にデータセット構築を行えることが期待される。構築されたデータセットの分析を、前年度より延期された国際会議等で発表し、他分野からのフィードバックをもとに、より洗練されたデータセット構築を目指す。 第二に、そうして得られたインターネット上のデータとその分析を質的にも考察し、これまでの理論的研究にさらなる側面を加えることを目指す。一対一の会話をモデル化するような伝統的理論が、SNS上でのやりとりといったより複雑な現象をどのように捉えることができるのか、あるいはどこに限界が存在するのか、といった点について考察を加え、伝統的理論の拡張を目指す。
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Causes of Carryover |
感染症の世界的流行により、参加予定であった国内外の研究会・学会への参加が不可能となったため、使用計画を変更した。今年度は、延期となったものも含め、国内外の研究会・学会への参加を行う。また、データ収集と、データのラベルづけにともなう作業への人件費として、助成金を使用する予定である。
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Research Products
(8 results)