2020 Fiscal Year Annual Research Report
A study of sentimentalist virtue ethics: focused on the philosophy of Michael Slote
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18K12196
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
林 誓雄 福岡大学, 人文学部, 准教授 (20736623)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | マイケル・スロート / ハーストハウス / スワントン / 幸福 / 徳 / 完成主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究最終年度の2020年度では、スロートの理論とその他の理論とを比較検討するための前提として、「幸福な生・徳のある生は、完成することが可能なのか」という論点を重点的に、考察を進めた。これにあたっては、スロートの近著である『The Impossibility of Perfection』を手がかりとした。 様々な具体例を提示しながら説明される徳どうしの衝突問題、およびそこから導かれる「〈すべての徳を持つ〉という理想、そして〈倫理的な完成〉という理想が、絶対に実現不可能なものだ」とするスロートの主張は、なるほど一定の説得力を持つものではある。ただ、このネガティヴな主張のウマミについてのスロートの説明が、どこまで腑に落ちるものであるかは検討の余地がある。すなわち、われわれが直面し苦しむところの倫理的葛藤が生じるのは、われわれ自身や社会に欠陥があるからではなく、先進社会に生きる知的存在の条件の基礎をなすものなのであり、それを知ることは、ある意味われわれの慰めとなる、というスロートの説明は、他の理論(特にアリストテレス流の主張)に対して、どこまで優位な説明となっているのか、検討の余地がある。そしてその検討の際に必要となるであろう、優位性を判断する基準を、どのように設定すれば良いのかについても、さらに調査をする必要がある。 他方で、スロートの理論は、「アリストテレス主義的一元論に対する」という意味での(しかも相対主義には陥らない)多元主義的なものだと捉えることができるが、そうだとして、スワントンの多元主義との比較によって、どちらに理論的な優位性があるのかについては、考察を進めることができなかった。以上、本年度の成果として、スロート研究を着実に前に進めることができた一方、それに伴い、多くの諸課題に直面することとなった。これらの残された諸問題の解決については、今後の課題としたい。
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Research Products
(2 results)