2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K12198
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
名和 隆乾 大阪大学, 文学研究科, 特任講師(常勤) (20782741)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | パーリ三蔵 / 縁起説 / 初期仏教 / 身体 |
Outline of Annual Research Achievements |
後代の主要仏典より「カーヤ」,五支縁起説の用例を調査し,ヴェーダ文献より「カーヤ」主要例の調査を行った.ジャイナ教文献,叙事詩文献の調査は現在も継続中であるが,2020年度早期に終える予定である.パーリ三蔵では頻繁に使用されるカーヤ(kaaya-)という語が,ヴェーダ文献では,この語単独,これを前肢とする複合語,後肢とする複合語を合わせても10例に満たないことが分かった. 共著『『義足経』研究の視点 附・『義足経』訓読』では,呉の支謙訳とされる「義足経」における「黠」「慧」の用法を報告した.支謙訳では,仏教の「智慧」(サンスクリット語でプラジュニャー等)に相当する漢訳語として,「黠」よりも「慧」や「智」が好まれることが指摘されている.本稿では,支謙訳とされる「義足経」では,「黠」「慧」がどちらも多用されていること,また両語の用法として,基本的には,どちらも「よい慧」の意味で用いられるが,しばしば前者が「悪慧」,後者が「善慧」の意味で用いられることを指摘した. 単著雑誌論文「「パーリ註釈文献における「子肉の喩」に関する一考察」」では,パーリ三蔵中,1例のみ存在する有名な「子肉の喩」のヴァリエーションが,註釈文献中に存在することを指摘した.またそのヴァリエーションでは,三蔵では親が子を殺したことになっている譬喩が,註釈文献では子が自然に死んだことになっている.本論文では,その理由について,両譬喩の言語的な特徴に注目して考察を行った. 11th INDAS International Symposium及びその準備研究会(どちらも英語発表)における研究発表では,異分野の研究者に向けて,パーリ三蔵において,死や自殺がどの様に扱われているかを報告した.報告者は,三蔵において,自殺は常に否定的に扱われる訳ではない事例を紹介し,“life is worth”という観念の相対化を試みた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
後代の主要仏典からの「カーヤ」および五支縁起説の用例調査,ヴェーダ文献からの「カーヤ」主要例の調査は予定通り終えることが出来た.しかし,19年度中に終える予定であったジャイナ教文献,叙事詩文献からの調査は終えることが出来なかった.この調査は,次年度早期に終える予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までの調査の点検,成果公開の準備を行う.すなわち,本プロジェクトの調査全体に基づき用例理解を調整し,結論を導く. 研究成果は,国内ではパーリ学仏教文化学会か日本印度学仏教学会で発表する.海外では,当初,国際仏教学会(大韓民国)での発表を予定していたが,コロナ禍の影響によって同学会が2021年8月に延期され,発表が叶わなくなった.国外での成果公開については,本プロジェクトの終了後に行う可能性を考えておく必要がある. 上記と併行して電子資料公開用データを準備する.データ形式はしおり付・検索 可能なMS Word, PDFファイルとする.この方が,本プロジェクト程度の資料規模では実用的と考えられる.電子資料は申請者のacademia.eduアカウントで公開する.
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Causes of Carryover |
文具や印刷用紙購入の為に使用する.
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