2019 Fiscal Year Research-status Report
A comprehensive study on Dharmakirti's Pramanavarttika and its commentaries.
Project/Area Number |
18K12203
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
石田 尚敬 愛知学院大学, 文学部, 准教授 (80712570)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 仏教論理学 / ダルマキールティ / プラマーナヴァールッティカ / 知識論評釈 / サンスクリット語文献学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、インド仏教の伝統にあって認識論・論理学を大成したダルマキールティ(法称、7世紀頃)の最初期の著作、『知識論評釈』(プラマーナ・ ヴァールッティカ)第1章(推理論)の本文およびその諸注釈書について、原典写本に基づく校訂・解読研究を実施し、仏教認識論・論理学研究における基本資料の整備を目的としている。 本年度は、研究計画の2年目にあたり、『知識論評釈』本文について、研究代表者が自ら撮影したカラー写本写真(パタン写本)を用い、主に推理論(結果に基づく推理)を論じた部分の原典テキストの異読調査を行った。さらに、ダルマキールティの孫弟子とされるシャーキャブッディの『知識論評釈』に対する注釈書が、ジャイナ教徒の思想家であるハリバドラ・スーリの著作に多く引用されていることから、原典写本が断片的にしか存在しない同注釈書について、サンスクリット語のテキストの回収を行った。 さらに、『知識論評釈』のテキストが大量に再利用(引用)されるダルマキールティ後期の著作『知識論決択』(プラマーナ・ヴィニシュチャヤ)の推理論(結果に基づく推理)を扱った箇所についても、並行文の調査を行うと共に、中国蔵学研究中心(China Tibetology Research Center、北京)とオーストリア科学アカデミーとの国際プロジェクトのもと、初めてサンスクリット語原典写本が参照可能となったダルモーッタラの注釈書『知識論決択注』を校訂しつつ、解読を行った。 また、2019年11月には、日墺外交樹立150周年を記念してオーストリア科学アカデミーとウィーン大学により開催された「日欧研究協力60周年記念シンポジウム」に参加し、仏教論理学派の諸著作について新たなサンスクリット語原典写本の情報を得るとともに、今後の研究計画を協議した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、ダルマキールティ(法称)の『知識論評釈』(プラマーナ・ヴァールッティカ)第1章(推理論)の本文およびその注釈書類について、原典写本に基づく校訂・解読研究を実施し、仏教認識論・論理学研究における基本資料の整備を目的としている。 研究計画の2年目として、『知識論評釈』本文について、「推理論」(結果に基づく推理)の箇所を中心に、研究代表者が自らインドで撮影した原典写本を用い、サンスクリット語原典テキストの異読調査を実施した。 同時に、『知識論評釈』のテキストを大量に再利用しているダルマキールティ後期の著作『知識論決択』(プラマーナ・ヴィニシュチャヤ)のサンスクリット語原典テキスト(2007年刊)についても「推理論」(結果に基づく推理)の箇所を中心に並行文の調査を実施した。 さらに、『知識論評釈』本文及び同書に対するダルマキールティの孫弟子シャーキャブッディの注釈書について、それらのテキストを大量に引用するジャイナ教徒の論理学者ハリバドラ・スーリの著作を参照することで、より多くの異読情報を収集するとともに、シャーキャブッディの注釈書について、新たなサンスクリット語原典テキストの引用断片を回収した。 本年度実施したこれらの研究は、おおむね当初の研究計画に沿ったものであったが、2019年11月にオーストリア・ウィーンで開催された「日欧研究協力60周年記念シンポジウム」に参加したことで、ダルマキールティをはじめとする仏教論理学派の著作について、サンスクリット語原典写本の新たな情報を得るとともに、参加した研究者より未公刊の論文なども入手し、今後の研究に有益な情報を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画3年目以降は、『知識論評釈』本文の異読調査を継続しつつ、『知識論評釈』に対する注釈書の研究を進める予定である。2019年度のオーストリア・ウィーン大学図書館の調査などにより、仏教論理学派のテキストを大量に引用するジャイナ教徒の思想家のテキストを新たに入手できたことから、カルヤーナ・チャンドラ(年代不詳)のものと推定され、引用断片のみが知られる『知識論評釈』注釈書に対し、ジャイナ教徒の手になる著作をより広範囲に調査し、新たな引用テキストの調査を行いたい。 同時に、ダルマキールティの孫弟子とされるシャーキャブッディの『知識論評釈』への注釈書についても、ハリバドラ・スーリをはじめとするジャイナ教論理学者の著作に引用が見られることから、これらの引用断片を包括的に調査し、ネパールで発見されたサンスクリット語写本(断片のみ現存)との比較を行い、原典資料の整備を図りたい。 また、研究計画3年目となることから、日本印度学仏教学会(7月開催)をはじめ、国内外の学術大会で成果報告のための研究発表を行い、情報交換も行っていく。
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Causes of Carryover |
2019年度内に実施を予定していたドイツ・ゲッティンゲン大学図書館での写本調査について、大学図書館の開館日などの関係により、2020年度以降に延期することとなった。そのため、海外出張旅費などについて、次年度使用額が生じた。
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Research Products
(6 results)