2022 Fiscal Year Annual Research Report
Policies of the Overseas Missionary Monk Training Programmes in Thai Theravada Buddhism and their Implementation in the United Kingdom
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18K12207
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Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
小布施 祈恵子 神戸市外国語大学, 外国学研究所, 客員研究員 (90719270)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 上座仏教 / タイ / イスラーム / イスラモフォビア / 宗教間対話 / 仏教保護運動 / 仏教国教化運動 / 東南アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度もCOVID-19パンデミックの影響が残る中で英国における仏教寺院へのアクセスが極めて限定的であり、現地調査が十分に行えなかった。このため海外派遣僧プログラムにおける改宗者獲得へのフォーカスとイスラームを仏教に対する脅威とする言説の関係について行った2021年度の考察をふまえ、タイ国内の仏教徒とムスリムの関係を概観しつつ宗教間対話等ムスリムとの関係改善に関するタイ仏教界の近年の活動に見られる傾向とその変遷を分析した。その結果以下のことが判明した。 タイ国内の仏教徒とムスリムの関係は2004年に南部で起こった武力衝突を機に悪化したが、これを受けてさまざまな対話のイニシアチブが取られ始めた。対立の緩和を目的とする対話はキリスト教徒の仲介で行われることも多かったが、2013年に仏教徒とムスリムの相互理解を促進するInternational Center of Buddhist-Muslim Understandingが国立マヒドン大学に設置され、定期的に対話を兼ねた国際学会を開催した。しかし同センターが仏教側からの反発と思われる理由などによって2019年に閉鎖して以来、仏教とイスラームに特化した対話の継続的なプロジェクトは行われておらず、仏教徒とムスリムの関係の改善への動きは弱まっていると言える。 その一方で国内でのムスリムの社会・政治的勢力の拡大に対する問題意識は相変わらず高く、イスラームを仏教の脅威とみなして仏教保護(特に仏教の国教化)を求める声が、サンガ関係者・在家仏教徒両方の間であげられ続けている。今後のタイ仏教界内のイスラームに関する言説及び海外布教の政策は、タイ国内(特に南部)の共存状況に加え、同じ上座仏教が多数を占めるミャンマーやスリランカでの動向と連動してゆく可能性が高いため、東南アジアと南アジアをつなぎ、グローバルなレベルでの宗教言説をも考慮した、超地域的な視点から考察してゆく必要があると思われる。
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