2019 Fiscal Year Research-status Report
現代社会におけるスーフィズムの意義とタリーカの役割-スーダンとエジプトの比較研究
Project/Area Number |
18K12212
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
丸山 大介 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 人文社会科学群, 准教授 (60749026)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | イスラーム / タリーカ / スーフィズム / エジプト / スーダン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、エジプトとスーダンのタリーカ(スーフィー教団)を対象に、スーフィズムに基づく思想と実践が現代社会においていかに保たれ、また、いかなる意義と役割を有しているのかについて考察することである。研究に着手して2年目となる本年は、昨年度実施した文献研究(タリーカの組織面に着目した研究およびスーフィズムとタリーカの関係をめぐる研究)に依拠しつつ、下記の研究を行った。 ①エジプトでの現地調査および文献収集 2019年8月3日から19日までの日程で、エジプト(主にカイロ)での現地調査を行った。本調査では主にアズミー教団に焦点を当て、教団が実施した各種行事(預言者一族に関する講演会など)に参加したほか、教団シャイフへのインタビューを行った。また、教団発行の月刊誌al-Islam watanやスーフィズム概説書などを網羅的に収集した。本調査では、改革派教団を自認する同教団における預言者一族との関係の重要性や、雑誌を通じた教団の広報戦略の一端が明らかになった。とりわけ、雑誌al-Islam watanには2011年から2020年現在に至るまで「なぜアズミー教団か」というアズミー教団の理念や歴史、特徴を紹介する連載が掲載されており、今後の研究においてその詳細を分析する予定である。 ②タリーカと聖者廟参詣に関する研究 タリーカのシャイフが眠る聖者廟を参詣する実践(聖者廟参詣)を通じた生者と死者との交流に関する研究に着手した。聖者廟参詣はしばしば対抗勢力による批判にさらされることもあるが、「不在」の死者(シャイフ)を介し、「今、ここ」での改善や変化を目指す聖者廟参詣について、タリーカがどのような正当性を与えているかについて分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
下記の2点から、「遅れている」との評価を行った。①エジプトでの調査については順調に始めることができたが、他方スーダンで2018年以降に頻発したデモやそれに伴うバシール政権崩壊、暫定政府発足などの情勢により、スーダンでの現地調査をこれまで一度も行えておらず、比較研究を行うための準備が整っていない。②また、今年度行う予定であった国際会議での発表が新型コロナウイルスの感染拡大に伴い不可能になったことで、研究成果の発表が行えなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う渡航制限が今後も継続されることが見込まれるので、渡航制限が解除されるまでは、エジプトにて収集した各種文献や雑誌を中心に、スーフィズムとタリーカの関係、タリーカの広報戦略の2点について考察を進める。加えて今年度行えなかった研究成果の公表を積極的に行う。
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Causes of Carryover |
2020年3月に予定していたイランへの出張(国際会議での発表)およびアメリカへの出張(議会図書館での文献収集)が新型コロナウイルスの感染拡大の影響で実施できなかったため、次年度使用額が生じた。渡航制限の緩和次第ではあるが、現地調査が可能な状況になれば現地調査を行う予定である。その他、スーフィズムに関する最新の研究書など文献の購入に使用する。
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