2020 Fiscal Year Research-status Report
現代社会におけるスーフィズムの意義とタリーカの役割-スーダンとエジプトの比較研究
Project/Area Number |
18K12212
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
丸山 大介 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 人文社会科学群, 准教授 (60749026)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | イスラーム / スーフィズム / タリーカ / スーダン / エジプト |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、エジプトとスーダンのタリーカ(スーフィー教団)を対象に、スーフィズムに基づく思想と実践が現代社会においていかに保たれ、また、いかなる意義と役割を有しているのかについて考察することである。研究に着手して3年目となる本年は、昨年度の現地調査にて収集した雑誌やインターネット資料の分析に取り組んだ。 エジプトのタリーカに関しては、アズミー教団が発行する雑誌al-Islam watanに2011年から連載されている「なぜアズミー教団か」という記事に着目して調査を行った。2020年1月号まで16のテーマが扱われており、そのほとんどが心の浄化や精神の変容を論じていた。同雑誌のその他の掲載記事と合わせ、アズミー教団がスーフィズムの倫理的側面(とりわけ、個人の内面の変容)を強調している点や、スーフィズムが社会の悪弊を改めうる特効薬と主張している点が明らかになった。こうした特徴は現代のタリーカに広く見られる傾向と言え、今後他教団の思想と比較する際の参照軸として用いることが期待できる。 スーダンのタリーカについては、ネオ・スーフィズム系教団として有名なサンマーニー教団のシャイフを務めたアブドゥルマフムード・ハフヤーン(d. 1973)が執筆した著作群の分析を行った。彼は主に9世紀から12世紀に活躍したスーフィーの説を引用しながら自身の論を組み立てており、彼独自のスーフィズム思想を打ち立てることよりも、従来の説の継承に重きを置いている点が明らかとなった。本研究についてはすでに英語論文を投稿済みであり、次年度に発行される予定である。また、2021年2月には一般向けにスーダンのスーフィズム・タリーカに関するコラムを執筆するなど、研究成果の社会還元にも取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請時に計画していた現地調査が新型コロナウイルスの感染拡大の影響でできておらず、比較研究を行う上での資料の収集がインターネットで入手できる情報を除けば進んでいないため、当初予定していた計画よりも遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度も渡航制限が継続されることが見込まれるので、渡航制限が解除されるまでは、これまでに収集した各種文献や雑誌、インターネット資料を中心に、スーフィズムの思想とタリーカの実践の関係、および、タリーカの広報戦略や広報内容について分析する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大による渡航制限に伴い、申請当初に計画していた現地調査がまったく実施できなかったため、次年度使用額が生じた。
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