2019 Fiscal Year Research-status Report
What is a planetarization of the urban
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18K12219
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
平田 周 南山大学, 外国語学部, 准教授 (00803868)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アンリ・ルフェーヴル / 都市的なもの / プラネタリー・アーバニゼーション / 空間論 / スケール / 都市への権利 / 市民権 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、都市研究において古典的な地位を占めるアンリ・ルフェーヴルの思想、とりわけ彼が晩年に提起した「都市的なものの地球化」の含意を解明することを目的としている。そのために必要な作業として、以下の通り三つの観点を相互に関連させて研究を進めている。第一にこのテーマに関してルフェーヴルが執筆したテクストの読解、第二に彼の空間論に依拠して英語圏で進む「プラネタリー・アーバニゼーション」研究の批判的検討、第三に都市化とグローバル化の相互作用が進むなかで改めて問い直される、市民権の概念に関する研究である。第三の観点に関しては、ルフェーヴルの『都市への権利』(1968年)との関連で研究を進めている。 2019年度の報告者者の研究では、主に第二と第三の観点から研究を遂行した。 まずクリスティン・ロス『もっと速く、もっときれいに-脱植民地化とフランス文化の再編成』の翻訳は、ルフェーヴル解釈の「第三の波」として参照される著作であり、彼の空間論が「第二のオスマン化」と呼ばれるパリ改造の時代であり、消費社会の進展による核家族化による「家」という空間の変容とアルジェリアの独立によるフランスという国家のリスケーリングを明らかにした著作である。この翻訳は、第二次世界大戦後のフランス社会に関する日本語文献が英語圏のそれと比べて乏しい状況にあって、広義のフランス研究に資するものである。 次に、従来の都市という領域を超えて地球全体に広がる都市化を分析対象とするプラネタリー・アーバニゼーション研究について、建築・都市のオンラインジャーナル『10+1 website』上で、社会思想史を専門とする報告者は都市社会学者の仙波希望氏と対談を行い、その英語圏での展開と、日本の都市研究との接続可能性を論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上に記した三つの観点、ルフェーヴルの都市化とグローバル化の相互作用に関するテクスト研究、プラネタリー・アーバニゼーション研究の動向、市民権としての都市への権利の研究に関しては、依頼原稿や翻訳を通して、成果を公表することができ、着実に進展していると言える。本年度は、報告者に『惑星都市理論』(以文社近刊)という論文集への寄稿依頼があり、人権と市民権の関わりで都市への権利に関する論文を執筆した。しかし新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的流行のなか、出版社から刊行時期を延期したいという要望があったため、この成果はまだ公表できていないが、遅くとも2020年度の秋には刊行できる予定であり、来年度の研究成果に結びつく研究の進捗状況だと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
上述したように本研究の成果は着実に公刊できている。しかし本研究の論考は断片的に発表されてきたため、より一貫した視座で研究成果を見るために、一冊のまとまった単独著作の研究書として刊行できないかと計画している。そのためにこれまでの報告者自身のルフェーヴルや思想史研究を含めて本研究の成果を総合して、2020年度と2021年度の研究期間に研究書を出版したい。 これと並行して国際的な場での研究成果の発表を行っていきたい。それを遂行するため、2020年度5月末にウルグアイで開催予定であったウルグアイ、メキシコ、フランスの大学共催のルフェーヴルに関する国際シンポジウムで発表を予定していたが、感染症の世界的流行のなかで中止となった。口頭発表が難しい状況であれば、海外のジャーナルに論文を寄稿することで、国際的に研究成果を公刊することに焦点をあてたい。
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Causes of Carryover |
2019年度の春休みに予定していたフランスでの研究調査を取りやめにしたため、当初予定していた助成金の使用計画を変更しました。2020年度は新型コロナウイルス流行が終息する見通しが立たないため、論文による研究成果の公表に重点をおき、そのために必要な物品費の購入に予算をあてる計画です。
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Remarks |
2019年度に報告者が執筆した事典の項目、オンライン・ジャーナルでの対談や書評に関しては、上記のURLに記載があります。
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Research Products
(2 results)