2020 Fiscal Year Research-status Report
The Transformation of the Rhythm Theory in The Classical music of North India
Project/Area Number |
18K12228
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井上 春緒 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特任研究員 (80814376)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ジョーリー / タブラー / ヒンドゥスターニー音楽 / インド音楽 / 太鼓 / パカーワジ / パンジャブ・ガラーナー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、インドでもほとんど奏者がいないジョーリーという太鼓の演奏法を習得することを通して、インドのリズム理論及び奏法の変遷過程を明らかにするものである。 申請書においては、ジョーリーが北インド音楽の代表的な打楽器であるパカーワジとタブラーの丁度中間的な要素をもっている楽器であり、ヒンドゥスターニー音楽の発展過程を理解する上で重要な楽器なのではないかと記した。そのことに関して、文献研究からもあきらかにすることを目標として掲げた。しかしながら、現在のところ当該研究において有力とみられる文献はみつかっておらず、文献研究では、当初の予測よりも進展していない。 一方で、実践面では、ジョーリーをインドでも屈指のジョーリー奏者ギャーン・シン・ナムダリー氏に師事し、着実にそのレパートリーを習得し、記録してきたことは、本研究における大きな成果と言えるだろう。具体的には、ジョーリーのレパートリーはタブラーとは大きく異なっており、パカーワジの影響を大きく受けていることや、パンジャブ地方で発展してきたことで、パンジャブ・ガラーナー(流派)の影響を大きく受けていることがわかった。そのことを踏まえ、パンジャブ・ガラーナーの歴史や奏者について調査し、特にシク教徒のナムダーリー・コミュニティーの音楽活動に焦点を当てる必要があると認識するに至った。ナムダーリーの宗派はグルバーニー・キールタンという宗教歌謡を継承しているが、その歌謡の伴奏を通してジョーリーの奏法が発展してきた歴史を踏まえた上で、この楽器の文化背景と奏法とを多角的に結びつけていくことが現在の研究の一つの帰結点になると考えるにいたった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究はジョーリーの習得を通して、北インドのリズム理論や奏法の変遷を明らかにすることが一つの目的であった。その点に関しては、すでに12拍子のチョウタール、16拍子のティーンタール、10拍子のスールファークタール、7拍子のティーブラ・タールなどの代表的な拍子における重要なレパートリーを習得することができた。同時にタブラーの習得も進めてきたことから、両者の奏法やリズム理論の比較をするための素材は十分に集まったといえるだろう。 もちろん、当初予定していた文献研究については思うような発展が見られていないことは懸念されるが、来年度から英国において研究を進めていく予定であるので、そこで文献研究を進めていきたいと思っている。 一方で、インドでの調査が現状困難であることなどから、ジョーリーの楽器としての文化背景を知ることがなかなかできていない現状がある。また、これまでの研究内容を分析し、まとめていくような作業もやや遅れている現状がある。現地調査が可能になる時期がわからないことを踏まえ、今ある資料を整理し、論文や研究発表の形でアウトプットしていくことが今後必要であると認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究においては主に2点考えられる。 まず一つは、これまで習得してきた楽器のレパートリーをデータとして整理し、タブラーとジョーリーのレパートリーの比較を行う。その上でそれぞれの奏法やリズム理論にどのような関係があるのかを明らかにする。 もう一つは、ナムダーリー宗派の宗教歌謡、グルバーニー・キールタンにおけるジョーリーの奏法とジョーリーのソロ演奏とを比較して分析することで、ジョーリーの奏法が歴史的にどのように変化してきたのかを明らかにすることである。
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Causes of Carryover |
当初計画していたように、現地調査が行えず、さらに緊急事態などの影響で、国内でも研究活動に支障がでたため、出費が当初の計画よりも少なくなった。 引き続き、現地調査はむずかしい状態であるため、国内において当研究に関係する書物や資料を購入する資金に使用したり、あるいはスカイプを使ったギャーン氏とのインタビュー等の謝金に使用する予定である。
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