2019 Fiscal Year Research-status Report
ソ連およびポスト・ソ連期のロシアにおいてメディア上の都市表象が果たした役割の研究
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18K12229
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
本田 晃子 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (90633496)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ソ連建築 / 映画 / モスクワ地下鉄 / 団地 / 集合住宅 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、これまで行ってきたモスクワ地下鉄の表象研究の集大成として、東アジア圏最大のスラヴ・ユーラシア研究の国際会議East Asian Conference on Slavic Eurasian Studiesにおいて、From Palace to Pandemonium: An Analysis on the Imagery of the Moscow Metro in Soviet and Post-Soviet Filmsと題した報告を行った。同報告内では、スターリン期に形成された神聖な空間としてのモスクワ地下鉄のイメージや神話的言説が、1970年代以降のソ連文化の変質およびソ連そのものの解体によって、どのように変容していったのかを論じた。現在、同会議で行った報告をもとに論文の執筆を行っており、2020年度中に学術雑誌へ投稿予定である。 また、ソ連映画におけるソヴィエト宮殿イメージについての報告を行うため、スラヴ・ユーラシア研究の世界最大の国際会議International Council for Central and East European Studiesに応募し、受諾されたが、今回の新型コロナウィルスの影響により、会議自体は2020年度から2021年度に延期された。 加えて、9月には約2週間にわたってモスクワでの現地調査を行った。文献調査としては、国立歴史図書館、モスクワ建築博物館の付属図書館に保管されている、1950年代から1970年代の建築雑誌のバックナンバーや図書資料などを閲覧した。また2020年度、2021年度の主たる研究対象となるソ連の集合住宅についての調査を開始し、モスクワのベッドタウン、ノーヴィエ・チェリョームィシュキにあるフルシチョフ時代の集合住宅を訪れ、実際の住宅の状況の確認や写真の撮影などを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、当初計画における3つの研究テーマ「地下鉄空間の表象」「周辺からのモスクワへの眼差し」「集合住宅の夢と悪夢」のうち、前2つのテーマについては、すでに国内学会・国際会議等での報告・論文の執筆作業が進んでいる。 2019年度は、教育業務や事務作業、学会運営等業務等の負担の増加により、特に授業期間中は研究に集中することが難しい状態が続いたが、3つ目のテーマとなるソ連の集合住宅イメージに関する調査(モスクワへの渡航調査、国内外の図書館等を利用した資料収集)は無事行うことができた。調査の成果については、2020年度以降順次所属学会や学術会議、シンポジウム等で公開していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度以降は、上記の3つのテーマのうち、「集合住宅の夢と悪夢」と題したパートに本格的に着手していく予定である。可能であればモスクワに渡航し、当時の建築雑誌などの出版物から、フルシチョフ時代・ブレジネフ時代に建設された集合住宅の開発の経緯、設計理念、それらをめぐる社会的言説などについて調査する。 また同時並行して、ソ連映画に撮影された集合住宅をタイプ別(革命直後に生み出されたコムナルカ、1920年代後半に出現したドム・コムーナ、スターリン時代のエリート向け住宅「スターリンカ」、フルシチョフ時代のいわゆる団地「フルシチョーフカ」、ブレジネフ時代の高層団地「ブレジネフカ」、あるいはドム・コムーナの改良型のドム・コムプレクス)に分類し、メディアにおけるソ連型集合住宅の描かれ方や、時代の変遷によるその推移についての分析を進めていく。
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Causes of Carryover |
1月以降に計画していた研究集会、資料調査のためのロシア渡航、2020年度に参加予定であった国際学会が、今回の新型コロナウィルスの影響により中止となったため、当該助成金が生じた。2020年度中に再び渡航が可能となった場合、2019年度に調査を行うことのできなかったモスクワ及び旧ソ連圏の主要都市における集合住宅の調査を行う予定である。
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Research Products
(10 results)