2019 Fiscal Year Research-status Report
近代日本の語り芸ジャンルの混淆とその拡がりに関する研究ー浪花節の地方展開を軸に
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18K12230
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Research Institution | Kyoto City University of Arts |
Principal Investigator |
薗田 郁 京都市立芸術大学, 日本伝統音楽研究センター, 非常勤講師 (60772241)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 語り芸 / 浪花節 / 人形芝居 / 近代 / 興行 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度も昨年度と同様の研究対象に対してフィールド調査を行い、主に高知県での文献調査および関係者への聞き取り調査を通じて節劇人形芝居に関する多くの情報を得ることが出来た。特に県内数か所で行った聞き取り調査では、これまでほとんど知られていなかった複数の浪曲師の活動が明らかになった。これにより、それぞれの浪曲師の活動が複層的に重なり、当地域の浪曲受容が形作られ、そのなかで節劇人形芝居が展開されていることが明らかとなった。この研究成果は論文として発表予定である(2021年度発表予定)。また、前年度より実施していた国立民族学博物館所蔵の音源調査の成果として、音源資料(「土佐の民俗音楽」)の紹介とともに、節劇に関わる演者の芸歴に着目した口頭発表を行った(東洋音楽学会全国大会)。源氏節については、源氏節女芝居の興行形態について解明を進めた。特に現存する源氏節女芝居のSPレコード音源のなかに、源氏節の語り芸だけでなく、複数の流行り唄、俗曲などが吹き込まれていることに注目し、それらの音源から源氏節が浪花節などと関わりのある特徴を有している一方で、後に隆盛する少女歌劇の形態にも繋がる可能性があることを検討した。これらの成果の一部は、ヨーロッパ日本研究協会(The 3rd EAJS Conference in Japan)において発表した。その他、活動人形については主に国会図書館での資料調査を行い、興行記録について成果を得た。これらの成果をもとに最終年度に向けて各地域での実態を纏める準備段階に入っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高知県でのフィールド調査に多くの成果が得られ、本研究課題の主な研究内容である演者に基づく興行ネットワークなどの繋がりが明らかとなっている。ただし高知県の調査は今後も調査自体を継続するため、本年度に計画していた成果発表はこれらの成果を待って最終年度に行うこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度における研究内容は、調査を実施した各地域間を対象として近代における語り芸の展開を包括的に把握することである。そのため、これまでに得られた複数の地域での研究成果を纏め、比較考察作業を進める。最終的にはその成果について発表を目指す。上記の作業過程においては、各地域に対して補完が必要な部分については追加の調査などを実施する。最終的な考察を通じた包括的な把握は、特に語り芸の興行活動における歴史的な位置づけ、社会的な位置づけを明らかにすることを目指す。また特に成果発表などを通じて得られた指摘、課題を踏まえて、本研究課題に引き続き展開される研究課題についても検討を進める。
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Causes of Carryover |
本年度に実施したフィールド調査の成果が当初よりも得られたため、本年度に予定していたシンポジウムを見送った。そのためシンポジウム開催のために計上していた会議に伴う旅費、物品費用などが使用されなかった。また一部は年度末のコロナウィルス拡大により、フィールド調査を見送ったため、それに伴う旅費などが使用されなかった。本年度での成果を踏まえて次年度に見送ったシンポジウムを開催し、また予定していた調査についても次年度に組み入れ、それぞれの実施費用として使用する。
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Research Products
(3 results)