2019 Fiscal Year Research-status Report
カロリング朝写本の物語イニシアルをめぐる総合的・地域横断的研究
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18K12239
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
安藤 さやか 東京藝術大学, 美術学部, 専門研究員 (90807504)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | カロリング / 物語イニシアル / 彩飾写本 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の2年目にあたる2019年度には、まず、2018年度に作成を進めた、カロリング朝期の「物語イニシアル」を含む作例の基礎資料作成を継続した。前年度は8世紀後半から9世紀初頭の作例を中心に行ったが、2019年度は大英図書館、パリ国立図書館、ミュンヘン国立図書館に所蔵される9世紀中葉~後半の作例を中心に拡充を図っている。基礎資料は現在、資料報告としての発表の準備を進めている。 これと並行して、個別研究に着手した。8世紀後半の《トマス福音書》(トリーア、大聖堂宝物庫、Cod. 61)や9世紀初頭の『文法書』写本(パリ、フランス国立図書館、Ms. lat. 13025)については、挿絵の手の違い等の様式分析に加え、従来の個別研究で議論が十分にされていない、写本の機能や用途といった成立背景も加えて検討している。8世紀末のリヨンの作例ついては、貨幣史など隣接分野の研究動向を踏まえつつ、美術史上の装飾の様式問題に、西ゴートの8~9世紀の彩飾写本との比較という点も含めて取り組んでいる。これには前年度に9月にスイスやドイツの図書館・文書館等で行った写本の実見調査や、これらの研究図書館で得た、未刊行学位論文や所蔵機関目録などの資料が非常に役に立った。加えて、9世紀前半の作例《コルビー詩編》(アミアン、市立図書館、Ms. 18C)についての、関連作例と比較しながら進めた研究は、所属機関の紀要論文ではあるが欧文での論文化に至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
対象作例の目録化の為の基礎資料作成は、当初の研究計画よりやや遅れている。これは、2020年3月に行う予定であった、ドイツを中心とする欧州の図書館・文書館・博物館での実見調査が、COVID-19の流行の為に渡航できず、実行がかなわなかったことによる。加えて、欧州から日本国内への物流の停滞の為、文献など資料の収集にも影響が出ている。特に、地方史等を専門とする小規模学術出版等は電子書籍販売フォーマットを持たず冊子でのみ販売するものも多く、国際貨物便の減便により入手困難な状況が続いている資料も多い。 一方、個別研究については、一部の個別作例の分析と考察を欧文で刊行に至った為、当初の研究計画通りに進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度に実行出来なかった実見調査は、2020年9月以降に行う。但し、渡航困難、或いは受け入れ機関の都合により調査困難な状況が続く場合、実見調査を先送りして入手済の資料から分析せざるをえない。個別研究については、既に多くの資料を入手している8世紀末の作例および9世紀後半の作例の2点を対象に進め、オンラインでの研究会などで内容の充実を図り、論文化を目指す。基礎資料は紙幅の都合上、査読付き学会誌ではなく機関紀要に資料調査報告という形で公開する準備を進めている。
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Causes of Carryover |
2020年3月に実施予定であった、トリーア、ミュンヘン、アーヘン、パリでの写本調査が、新型コロナウィルスによる渡航困難で延期となったこと、注文していた一部の資料が、物流の混乱の為に一時キャンセルとなったことによる。実見調査は2020年9月以降に延期するが、渡航困難な状況が続く場合、既に調査済みの史料からの論文化を優先し、資料購入費および外国語論文執筆の際の校正・校閲費に充てる予定である。
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Research Products
(1 results)