2021 Fiscal Year Annual Research Report
Religious Functions of Renaissance Art: Faith and Patronage in the Cassinese Congregation
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18K12241
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
百合草 真理子 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 研究員 (80813188)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ルネサンス美術 / 北イタリア / カッシーノ会 / パトロネージ / カトリック改革 / 聖堂装飾 / 図像プログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、北イタリアの諸都市を拠点としてルネサンス期にイタリア全土に勢力を拡大したベネディクト会系改革派カッシーノ会の修道院建築を対象に、北部/中部イタリアという地域性に由来する修道院装飾の形式や芸術様式を比較しながら、彼らが雇用した芸術家との関係を考察し、同会の宗教性・神学的関心・改革派としての立場に照らして、16世紀初頭の美術作品の宗教的/芸術的機能を明らかにすることを目的とした。未だ先行研究の乏しいカッシーノ会の修道院建築について、北イタリアを中心とする各聖堂装飾の実地調査を進め、その問題系列を提示した本研究により、カッシーノ会と彼らに雇用された芸術家との関係、そのパトロネージの実態の一部が浮き彫りとなり、特定の作品/芸術家とカッシーノ会の神学思想や宗教性との結びつきが明らかとなった。また、各地域におけるカッシーノ会の芸術的取り組みを16世紀イタリアの宗教的コンテクストへと位置づけ、人文学の領域において従来問題とされた、ルネサンス美術の機能と価値をめぐる議論を考察するための一つの視点を提示した点に意義がある。 本年度は、キリスト教建築の伝統的な装飾方法を考慮した包括的な視野から、無装飾・無彩色を特色とするカッシーノ会の基本的な聖堂装飾の手法に着目し、そうした志向性と、救済と恩恵、義認と功績をめぐる彼らの神学的立場との関連を検討した。さらにこの傾向性と対比させて、例外的にフレスコ画を施したピアチェンツァのサン・シスト聖堂、パルマのサン・ジョヴァンニ・エヴァンジェリスタ聖堂における芸術実践を捉えることで、抽象的/具象的な装飾によってもたらされる観者の視覚体験をそれぞれ分析し、カッシーノ会聖堂において美術作品に求められた機能と役割を考察した。これらの考察の内容の一部は、本年度に刊行した『コレッジョの天井画:北イタリアにおけるルネサンス美術と宗教改革』において公開した。
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