2018 Fiscal Year Research-status Report
Fundamental Study on Shozan Genyo , who is Japanese Woman Artist in 17th Century
Project/Area Number |
18K12243
|
Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
中村 玲 実践女子大学, 文学部, 助教 (80745175)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 女性画家 / 宮廷社会 / 黄檗文化 / 狩野派 / 後水尾天皇 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は、後水尾天皇の8番目の皇女であり、江戸時代前期に多くの絵画を残した女性・照山元瑶の絵画制作の実態を明らかにしようとするものである。 上記の課題を遂行するため、現存する元瑶による絵画の悉皆調査および関連する文献史料の調査を行っている。平成30年度は、はじめに関東地区における調査を進めた。具体的には、東京都や神奈川県所在の複数の寺院に伝来する絵画の実見調査や、当該地域の歴史や文化について詳しい記述が残る文献史料の収集、また元瑶の功績や画業を収載した近世の未刊資料の精査などである。次に、元瑶の絵画や書跡がまとまって伝来・所蔵されている、滋賀県や京都府等の関西地区の寺院や研究機関での調査、および当該地域の文献史料の収集に努めた。 絵画の実見調査では、水墨画や彩色画による元瑶の画風および様式を、画題や部分ごとに詳細に分析した。おおらかな筆致による水墨画のほか、緻密な描法による彩色の仏教絵画や肖像画、また作品の箱書や裏書、表具、付属品なども拝見し、元瑶の絵画学習や落款の無い作品の制作時期、あるいは交友関係、制作背景等を検討することが可能となり、今後元瑶の画業を示す具体的な年譜を作成するための重要な手掛かりを得ることができた。文献史料の調査では、元瑶や父・後水尾天皇の師承関係等から、当該地域に作品が伝来する可能性を考えることができた。 また、実見調査や文献史料調査を進めていく段階で、新たに元瑶の絵画や史料の存在を複数知ることができたため、次年度以降の調査計画にも加えていきたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題では、絵画史のみならず文化史、女性史においても非常に重要といえる照山元瑶の作品の悉皆調査を実施している。また、文献史料の精査・分析により、元瑶の制作活動を実証的に解明し、日本美術史上に明確に位置付けることを目指している。 平成30年度は、本課題にて実施予定の悉皆調査のうち、約3分の1の絵画・書跡等を実見し、各々の特徴や表現上の創意工夫等を把握することができた。また、文献史料の調査では、黄檗僧や関連寺院に帰依した人物など、元瑶周辺の交友関係を知ることができた。当年度に得られた成果については、令和元年度前半に所属学会の大会にて報告を予定している。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の成果を踏まえ、次年度は所属学会における大会にて、主に元瑶の絵画の特徴や人的交流を中心とする内容の中間報告を行う予定である(令和元年9月)。さらに、絵画等の実見調査はかなり進んではいるが、令和元年度は主に元瑶や父・後水尾天皇が深く関与した関西地区の寺院に重点を置き、より多くの調査を推進する。基準作品の選定、あるいは作品の年代的推移に関して考察するほか、署名の記述内容や印章の種類についてあらためて整理し、年譜や印譜作成を進めるなど、元瑶の画業についてさらなる実証化、体系化に努めたい。 その上で、令和元年9月に予定している報告や、当年度に調査予定の作品および文献史料等の考察を含めた内容による論文を公表する(令和2年3月)。
|
Causes of Carryover |
作品や文献史料が所蔵される調査先への申請が遅れたこと、調査先のご都合により令和元年度以降に調査を見送る必要があったことにより、当該助成金が生じた。次年度以降に国内外での調査を実施し、適切に使用する。
|