2020 Fiscal Year Research-status Report
Fundamental Study on Shozan Genyo , who is Japanese Woman Artist in 17th Century
Project/Area Number |
18K12243
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Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
中村 玲 実践女子大学, 文学部, 助教 (80745175)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 女性画家 / 宮廷社会 / 黄檗文化 / 狩野派 / 後水尾天皇 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は、後水尾天皇の8番目の皇女であり、江戸時代前期に多くの絵画を残した女性・照山元瑶の絵画制作の実態を明らかにしようとするものである。 上記の課題を遂行するため、現存する元瑶筆の絵画の悉皆調査、および関連する文献史料の調査を行っている。当初の予定では、令和2年度は本課題の最終年度であったが、新型コロナウイルスの影響により、研究期間を令和3年度まで延長することとなった。 令和2年度は、それまでに得られた成果を補強するため、関西、関東地区の寺院に伝来する元瑶筆の「観音図」に関する追加調査を実施した。このことにより、論文「照山元瑶筆「観音図」に関する考察」(『実践女子大学美學美術史學』第35号、2021年3月)を執筆することができた。 また、前年度や当年度、元瑶の絵画や書跡等の存在を新たに複数知ることができたため、コロナ禍ではありながらも調査先の協力を得て、滋賀県、京都府、大阪府の寺院に伝来する作品の調査を行った。前年度までの調査結果とこれらの成果を合わせ、論文「照山元瑶の落款に関する試論」(『崇城大学芸術学部研究紀要』第14号、2021年3月)の執筆も行うことが可能となった。 このほか、作品調査を進める中で、元瑶と関連の深い寺院に旧蔵され、元瑶の周辺人物が関わったと見なすことができる作品、従来の研究では未紹介であった作品および箱書、裏書等の資料を複数見出すことができた。これらについては、最終年度の総まとめとして、論文発表を行う予定である。また、新たに知ることができた元瑶に関する未見の作品については、次年度の調査計画にも加えることとする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題では、絵画史のみならず文化史、女性史においても非常に重要といえる照山元瑶の作品の悉皆調査を実施している。また、文献史料の精査・分析により、元瑶の制作活動を実証的に解明し、日本美術史上に明確に位置付けることを目指している。 令和2年度は、論文「照山元瑶筆「観音図」に関する考察」(『実践女子大学美學美術史學』第35号、2021年3月)を公表した。元瑶の絵画において、両手を腹前に組み、雲上に立って来迎する姿で描かれた、いずれも由緒ある寺院に伝来する4点の「観音図」について、賛や作品に伴う史料、制作時期や背景、落款の特徴などを検討したものであったが、作品や一次資料に関する一連の調査成果やそれらに基づく考察を反映することができた内容となった。 次いで、論文「照山元瑶の落款に関する試論」(『崇城大学芸術学部研究紀要』第14号、2021年3月)の公表も行った。当年度までに行った作品調査をもとに、制作年が判明ないし推定できる作品を整理したほか、落款の内容や筆跡、印章を詳細に分析した。その結果、宝永期(1704-11)前半、元瑶70代前半において制作年が明らかな作品が多いことや、70代後半から晩年にかけて書跡の点数がさらに充実していくこと、年齢を重ねることにより筆跡や署名内容、用いる印章が変化していくことなどを提示し得たことは大きな成果であった。これらのほか、当年度、新たに知ることができた作品や、元瑶と関連の深い寺院に旧蔵されていた作品、先行研究では未紹介であった作品などを把握することができた。 当初の予定よりやや件数は少ないが、当年度は調査先の協力により、コロナ禍においても本課題にて実施予定の悉皆調査を継続して行うことができた。これまでに得られた結果と令和3年度前半までの調査成果を踏まえ、令和3年度後半に研究の総まとめを行う。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は本課題の最終年度であるため、まずは京都府、滋賀県、大阪府、東京都の寺院等において、昨年度までに成し得なかった未見の作品調査や関連資料の収集を行う。4年間の調査研究で得られた成果を踏まえ、所属学会誌にて論文発表を行い、研究の総まとめを行う予定である(令和3年度後半)。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により調査を延期せざるを得なくなったこと、調査先の都合により次年度に調査を見送る必要があったことにより、当該助成金が生じた。最終年度である次年度には調査を実施し、適切に使用する。
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Research Products
(3 results)