2023 Fiscal Year Research-status Report
ポストコロニアルの視座から見るフランス近現代美術の状況
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18K12247
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Research Institution | Hijiyama University Junior College |
Principal Investigator |
宇多 瞳 比治山大学短期大学部, その他部局等, 講師 (70735290)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 脱植民地化 / 展示 / 美術批評 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、欧米の美術館や博物館で近年広がりを見せている略奪文化財の返還の動きを、現代美術の脱植民化に関連する問題として捉え、情報収集を行った。また、フランスの中学高校で用いられている地歴教科書を調査し、過去の植民地支配や戦争の歴史と西洋美術が学校教育においてどのように記述・図示されているのかを検証した。加えて、第18回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展を視察し、脱植民地化の流れが現代の建築設計の理念やビエンナーレの展示デザインにどのようにあらわれているのかを考察する準備を進めた。その中で、文化財や美術作品そのものだけでなく、作品の展示方法や展示を通じた観客の経験、そして、それらをめぐる政治性についても研究対象とする必要があると考え、研究が進んでいる英米のエキシビション・スタディーズやビジター・スタディーズに関連する資料の収集及び調査を開始した。 並行して、日本の近代美術における戦争への関与や、戦後のヒロシマや被爆者をめぐる問題を、当時の美術界や美術批評家がどのように捉えていたのかを明らかにするため、瀧口修造の美術批評を読み解いた。戦後の瀧口が、音信不通となっていたヨーロッパの詩人や画家らの消息をたどりながら自身の美術批評の方向性を模索していたこと、ピカソによって描かれた白い鳩の絵が戦後の平和を象徴する図像とされていったことに対して瀧口が強い共感を抱いていたこと、また、彼が戦前・戦中の画家たちの「前衛と抵抗」を体現する存在として広島県出身の靉光を評価していたことなどを論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料収集が進み、それらを整理する準備に取り掛かりつつあること、また、瀧口修造の美術批評に関して紀要論文を執筆したことから研究は進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに行った調査を論文にまとめ、学会誌や紀要に投稿できるよう準備を進める。
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Causes of Carryover |
渡航制限の解除等に伴って航空券の価格が上がったことなどから、海外調査を航空会社の繁忙期以外の時期に実施せざるを得なくなってしまったため。
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