2021 Fiscal Year Research-status Report
The Image of "Asia" in Early Modern European Art
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18K12248
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
落合 桃子 福岡大学, 人文学部, 准教授 (40434237)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アジア / 四大陸 / ティエポロ / 西洋美術 / バロック / 象 |
Outline of Annual Research Achievements |
西洋美術において「アジア」はどのように表象されてきたのか。本研究では、16世紀から18世紀のヨーロッパで制作された四大陸図(ヨーロッパ・アジア・アフリカ・アメリカ)の「アジア」の寓意表現の収集・分析を通じて、考察を行ってきた。 これまでの研究成果の集大成として、近世ヨーロッパの四大陸図像で、重要かつ最大規模の作例である、ティエポロによるドイツ・ヴュルツブルクのレジデンツ(司教宮殿)階段室天井画《アポロと四大陸》(1752-53年)について、分析を進めている。 四大陸は、イタリアや南ドイツなどのカトリック文化圏においては、教会や宮殿などの装飾としてしばしば取り上げられてきた主題であり、ティエポロの本作品もこうした系譜に位置づけることができる。「アジア」の寓意像は、当時のヨーロッパで広く普及していたリーパの図像学事典『イコノロギア』にあるように、駱駝と共に表されるのが定型となっていたが、本天井画の「アジア」の場面には、象が描かれているのである。(駱駝は「アフリカ」を表す女性像と共に登場している。) ティエポロはいったいなぜ、「アジア」の動物として、象を選んだのか。先行研究ではヨーロッパ人によるアジア旅行記からの影響が指摘されており、本研究でも、まずは研究実施計画に基づき、ムガル帝国やシャムなどの旅行記の挿絵を確認していった。しかし、こうした旅行記に見られる象のほとんどは、三角に近い小さめの耳を持つ、いわゆる「アジア象」であって、ティエポロが描いた、縦長の大きな耳をした「アフリカ象」とは異なっているのである。そこで、旅行記ではない、別の視覚的着想源があるのではないかと考え、その手掛かりを得るため、象が登場するティエポロの他作品について考察を進め、さらに、象が描かれた近世美術の作例の収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルス感染症感染拡大の影響で、当初より計画していた海外調査を実施することができず、国内やインターネットで入手可能な文献を調査するに留まった。しかしそれでも上記のとおり一定の成果を得ることができ、象が描かれたティエポロや他の画家たちによる作例の収集分析など、新たな視点からの研究を進めることができた。その他、研究調査の過程で、ドイツで活躍したオランダ人芸術家、ヨハン・トルン・プリッカー(Johan Thorn Prikker, 1868-1932)と日本・アジアとの関係に関する知見を得ることができ、これについて学会発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
ティエポロ《アポロと四大陸》の象のイメージについて、前年度までに得られた知見を元にさらに考察を進め、これまでの研究成果の集大成として、論文を執筆・投稿する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の感染拡大により、2020年度以降、研究実施計画で予定していた海外資料調査を実施することができず、その代替として文献資料の購入を進めたが、次年度使用額が生じる結果となった。今後の調査や論文執筆に際して必要となった文献資料の購入等に充てる。
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