2021 Fiscal Year Research-status Report
近代竹工芸の調査研究―飯塚琅カン(「カン」は「王」偏に「干」)齋を中心に
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18K12249
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Research Institution | Tochigi Prefectural Museum of Fine Arts |
Principal Investigator |
鈴木 さとみ 栃木県立美術館, その他部局等, 主任研究員 (70525055)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 工芸 / 竹工芸 / 伝統工芸 / 日本美術 / アメリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、飯塚琅カン齋の制作と活動を軸に、竹工芸を日本近代美術史に位置付けることである。若手研究4年目となる令和3年度は、前年度に引き続き、美術資料の調査および文献資料の収集と基礎調査を進めた。飯塚家に残されていた膨大な関連資料は、保存と活用の観点から昨年度、一括して当館に寄贈された。当該資料の調査にさらなる時間を要することとなり、期間をさらに1年延長することとした。 また、所属研究機関である栃木県立美術館にて2021年4月に「岩田色ガラスの世界展―岩田藤七・久利・糸子」と題する展覧会を開催した。近代日本のガラス工芸史の礎を築いた岩田藤七の長男の久利は、日展を中心に活躍し、資生堂現代工藝展では同じく出品作家であった飯塚琅カン齋の次男の小カン齋とも交流があった。そこで二人の制作と作品、残された資料類から、当時のガラス工芸と竹工芸における工芸観について比較検討を行った。図録への寄稿はテーマと紙幅の都合上見送られたが、企画展と同時開催したコレクション展にて小カン齋の作品を展示し、その成果の一部を解説として紹介した。 さらに、2022年春に、開館50周年を迎える栃木県立美術館の活動を振り返る展覧会を担当することとなった。学芸員による調査研究を紹介する章を設けることを視野に入れ、飯塚家から寄贈を受けた資料の整理や、報告者がこれまでに担当した竹工芸展(「竹のめざめ」展(2014年)、「竹の息吹き」展(2020年))に出品した所蔵品や展覧会をきっかけに寄贈に至った作品等を中心に調査を進めた。調査研究は企画展の開催のみならず、コレクションの形成とも密接な関わりを持つ一例として、同展での紹介を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和3年度は担当した企画展「竹の息吹き」展の事後処理や、企画展の準備等で研究代表者の研究機関での業務が想定以上に増加したため。 さらに、昨年度に続きコロナウイルス感染症の世界的大流行により、国内外での出張、調査が不可能になり、科学研究費の研究の進捗状況に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
飯塚琅カン齋を中心とした調査を今後も継続していく。琅カン齋が躍進を遂げた1930年代を中心に、雑誌『工芸指導所』、『工藝ニュース』、『民藝』などから、工芸・デザイン界での竹をめぐる活動との関わりについて調査を進める。 同時に、昨年度一括寄贈を受けた飯塚家に関する貴重な資料の整理を進め、覚書帳にみられる制作の背景や技法について解明し、書簡やアルバム、新聞スクラップより、同時代の作家や支援者との交友関係についても明らかにしていく。寄贈資料にはカセットテープに録音された小カン齋のインタビュー等も含まれており、劣化を防ぐために音声データのデジタル化等も検討していきたい。 さらに、これまでの3年間で得られた国内外の調査対象者との交友関係を活かしながら、新たな調査を実施する。海外の竹工芸コレクション(飯塚家の作品を含む)に関わる資料調査の依頼もあり、コロナ禍で実施できなかった海外調査についても、状況を見極めつつ対象地域を確定し実施していく予定である。 以上を通して、飯塚琅カン齋の制作と活動を軸に近代竹工芸について考察し、最終のまとめとしたい。
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Causes of Carryover |
昨年度に続き、当該年度も新型コロナウイルス感染症の影響で、国内および海外調査を中止・延期にせざるを得なかった。次年度も海外調査を含めた研究費の使用が必要であり、研究資料の購入及び調査旅費として使用する予定。
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