2022 Fiscal Year Annual Research Report
Research on Modern Bamboo Art: Focusing on IIZUKA Rokansai
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18K12249
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Research Institution | Tochigi Prefectural Museum of Fine Arts |
Principal Investigator |
鈴木 さとみ 栃木県立美術館, その他部局等, 主任研究員 (70525055)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 工芸 / 竹工芸 / 伝統工芸 / 日本美術 / アメリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、飯塚琅カン齋の作品と制作活動を軸に、竹工芸を日本近代美術史に位置付けることである。最終年度は、栃木県立美術館に寄贈された飯塚家の関連資料の精査を進めるとともに、琅カン齋が躍進を遂げた1930-40年代を中心に、美術工芸界での竹をめぐる活動に関わる文献資料を収集し、その考察を深めつつ全体をまとめていった。 1930-40年頃は、商工省工芸指導所や建築家のブルーノ・タウト、民芸運動の作家たちが日本の「手仕事」に注目していた時代であった。伝統的な素材である竹は、この時代の工芸・デザインを象徴する位置を占めることとなる。琅カン齋の工房を訪ねたタウトは、彼の作品を「高い芸術的境地を達得したもの」と評した。また、当時の対外グラフ誌『NIPPON』の「パリ万国博覧会号」(11号、1937年)では、国際文化振興会が出品した様々な工芸品の文化的背景を紹介し、日本を代表する「陶工」として濱田庄司が、「竹工芸家」として琅カン齋が大きく取り上げられた。さらに、同会が製作した「KBS文化映画」のうち、「竹籠」(1940年)は琅カン齋を特集している。このように、伝統性と近代性を兼ね備えている点で、竹工芸では琅カン齋が、日本文化の国際的なアピールに重要な役割を果たしていた。 1930年代半ば、琅カン齋が自身の作品の品格を示し、竹工芸に対する理解を得るために自らの作品を「真」・「行」・「草」の三態を用いて語っていたことはしばしば論じられてきた。しかし、戦中、戦後の制作におけるその概念の展開について検証されることは少なかった。そこで、日展出品作や依頼主との交流、関係者への聞き取りなどから、彼が目指した芸術としての竹工芸の到達点を考察した。 今年度は栃木県立美術館の開館50周年にあたり、その活動を振り返る企画展を4月に開催した。同展並びにその小冊子によって、本研究の成果の一部を公表した。
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