2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K12252
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Research Institution | Kanagawa Prefectural Museum of Cultural History |
Principal Investigator |
神野 祐太 神奈川県立歴史博物館, 学芸部, 学芸員 (40757473)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 仏像 / 相模国 / 時衆 / 臨済宗 / 院派仏師 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、撮影機材や日本彫刻史関連の書籍を購入し研究環境の整備につとめ、当該地域の地域史(彫刻史・文献史学・考古学等)の先行研究を調査した。また、相模川流域の神奈川県内における市町村(相模原市、海老名市、厚木市、大和市、座間市、綾瀬市、茅ヶ崎市、藤沢市、平塚市、愛川町、寒川町、清川村)のこれまでの調査報告書等を確認し、調査対象となる仏像を約60件リストアップした。これらの像の中から、神奈川県立歴史博物館にこれまでの調書が保管されている場合には適宜確認をおこない、所蔵・保管先に連絡を取り始めた。 実査をおこなうことができたのは、海老名市龍峰寺千手観音菩薩立像、藤沢市養命寺日光菩薩・月光菩薩立像である。龍峰寺像は、鎌倉時代の製作とみられているが、平安時代前期の形式と構造の特徴がみられることから、日本美術院の国宝修理図解(個人蔵)等の修理記録とあわせて分析をおこなった。後補や新補の部分を修理記録と突き合わせながら確認したことでより精度の高い基礎データが得られた。養命寺像は、公益財団法人美術院国宝修理所で保存修理後に調査の機会を得た。この2件の仏像については、先行研究の調査をおこないこれまでの評価をまとめた。すでに評価がさだまっている仏像であっても、彫刻史ではあまり取り上げられてこなかった先行研究や関係史料があることを見出すことができた。 古代の相模川流域に位置する愛甲郡、高座郡、大住郡に関しては文献史料がすくなく、現存する仏像を精査することで、この地域の歴史の一端に新たな資料を提示できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年度は、研究環境の整備及び調査対象を絞りこむことに重点をおいたため、時間的制約もあり実査の件数が限られてしまった。また、当初は相模川の東岸を中心に研究を進める予定であったが、西岸や下流域を含めた方がより多角的に相模川の地域性が追えることに気づきそれらの地域を考察対象に含めることにした。
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Strategy for Future Research Activity |
調査対象のリストアップはほぼ完了しているので、仏像の所蔵・保管先に連絡をとり、調査を随時進めていく。リストアップをおこなうなかで、指定文化財となっている仏像についても基礎情報がまとめきれていない事例があり、実査だけでなく調査・修理記録、先行研究等の基礎資料を集めることにも注力していく必要性を感じた。そこで奈良国立博物館の日本美術院彫刻等修理記録データベースを利用し、戦前に日本美術院で修理された仏像(養命寺薬師如来坐像、八剣神社不動明王像、龍峰寺千手観音像等)の記録類を調査する。 また、相模川東岸に位置する相模原市無量光寺に注目する。同寺は時衆を組織した真教上人が独住し拠点としたため相模川流域でも特に重要な寺院である。文保2年(1318)の寿像とわかる小田原蓮台寺真教上人像や、東国に伝わる東京法蓮寺像、埼玉法台寺像、山梨称願寺像など、真教上人の肖像彫刻を中心に実査をおこなっていきたい。
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Causes of Carryover |
実査を2件しかおこなうことができず、調査の協力人員が確保できなかったこともあり、謝金を支払うことができなかったことが主な理由である。2019年度には、実査を精力的におこない調査員の協力を得ることで、適切に助成金を執行していきたい。
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