2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K12252
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Research Institution | Kanagawa Prefectural Museum of Cultural History |
Principal Investigator |
神野 祐太 神奈川県立歴史博物館, 学芸部, 学芸員 (40757473)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 仏像 / 相模国 / 時衆 / 他阿真教 / 国分寺 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は、引き続き仏像の実査を中心におこない、一部研究成果を公表することができた。一方で、所蔵先と調整がつかず、調査をおこなえなかった件数もすくなくなかった。 藤沢養命寺薬師如来像等の奈良国立博物館所蔵日本美術院彫刻等修理記録を調査した。その成果を藤沢市明治公民館・郷土歴史課の主催する講演会で「養命寺の仏さま」(会場:明治公民館、2019年5月30日)と題して発表し、論文としてまとめた(神野祐太「養命寺薬師如来像に関する一考察」『藤沢市文化財調査報告書』55、2020年3月)。養命寺像の尊像構成・原所在・願主・近代の状況について論じた。 相模川東岸に所在する相模原無量光寺を開山した時宗二祖他阿真教に注目し、東国に伝わる埼玉法臺寺・東京法蓮寺・神奈川蓮台寺・山梨称願寺の他阿真教像の実査・写真撮影をおこなった。各像の基礎データを得ることができ、面貌表現を中心に細かく調べ、それぞれの関係性について考察した。なお、当該年度に特別展「真教と時衆」を神奈川県立歴史博物館と遊行寺宝物館で開催し、担当者として携われたのも大きかった。相模川流域で時衆がはたした役割の大きさを再確認できた。 相模川流域の中でも重要な寺院のひとつである相模国分寺の安置諸像について文献資料を中心に調査をおこなった。相模国分寺の仏像は流汗した記事が『日本紀略』天慶3年(940)にみえることから特異な仏像として知られている。像そのものは現存しないが、東国の仏像史を考えるうえでは重要な出来事と思われ、他の流汗の仏像に関する中国、韓国、日本の資料を収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度では、研究対象となる仏像の実査をおこなうことができた。藤沢養命寺薬師如来像に関する研究成果を盛り込んだ講演や論文を発表し、本研究による成果をいち早く一般に還元することができた。また、相模川流域東岸の無量光寺を拠点とした他阿真教の彫像について、関東に現存するほぼすべての像を実査できたのは大きな成果である。実査で得られた基礎データを分析し、研究成果を発表できるように準備をしている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は研究の最終年度にあたるため、研究成果をまとめていく。10月~11月にかけて本務である神奈川県立歴史博物館では特別展「相模川流域のみほとけ」を開催する予定であり、そこで本研究の一端を広く公開したいと考えている。令和元年度までに研究対象とした龍峰寺千手観音菩薩像、藤沢養命寺薬師如来像、小田原蓮台寺他阿真教像の出品だけでなく、今年度に調査をする仏像を展示予定であり、また展覧会中にも実査をおこなう。研究計画当初の目的である相模川流域に所在する仏像を広く一般に公開できれば、本研究の目的はある程度達成されるだろう。引き続き、仏像の調査を進める。 なお、新型コロナウイルスの感染症対策のため、仏像の実査や図書館等での資料調査がおこなえない状況で、研究にも影響がでている。今後の状況を見据えながら慎重に研究を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
当初計画していたよりも、調査の補助人員を確保しなくてはならないケースが少なかったことから、人件費・謝金の支出が少なくなっている。調査の補助を依頼した場合でも謝金を受け取れないケースがあり、その場合は旅費のみを計上している。次年度は最終年度にあたるが、図書館が使用できないため関係資料を購入する必要性が高まっており、人件費分を充当したい。引き続き調査を進めるため旅費が必要である。最終年度であるため、調査報告書の印刷を予定している。
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