2020 Fiscal Year Research-status Report
東アジア的視点から見た高麗青磁の総合的研究―産地、編年、流通、需要の諸様相
| Project/Area Number |
18K12253
|
|---|
| Research Institution | Administrative Agency for Osaka City Museums |
|---|
Principal Investigator |
鄭 銀珍 地方独立行政法人大阪市博物館機構(大阪市立美術館、大阪市立自然史博物館、大阪市立東洋陶磁美術館、大阪, 大阪市立東洋陶磁美術館, 学芸員 (20531263)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
| Keywords | 高麗青磁 / 韓国陶磁史 / 東アジア / 黒釉 / 中国陶磁 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
高麗青磁は韓国のほか、中国や日本をはじめとする東アジアの諸地域でも陶片が出土しており、生産から需要、流通にいたるその全体像を東アジア陶磁史の視点から多角的に比較考察するのが本研究の目的である。
本年度は、高麗青磁と同時期に生産された高麗黒釉について、昨年度に引き続き黒釉という観点から諸資料を集成した。高麗にもたらされた中国黒釉盞が想像以上に豊富で多彩であるとともに、そうした中国黒釉盞、とりわけ建窯の兎毫盞と吉州窯の玳皮盞を意識した製品をつくりだすべくさまざまな試行錯誤が高麗で行われていたことも確認することができた。その研究成果を、「中国黒釉盞の受容と高麗黒釉」と題する論文を執筆し、建窯をはじめ吉州窯、磁州窯の多様な中国黒釉盞の高麗への流入の様相を明らかにし、高麗内での黒釉の受容から生産への影響という、従来、研究の空白となっていた問題を初めて取り上げて論じた。
また、高麗末から朝鮮初期に製作された高麗青磁象嵌などの沖縄出土陶片について、出土品データを整理し、琉球王国と朝鮮王朝間の交易や需要に関する文献調査も行い、基本的な資料を集成した。その結果、琉球にもたらされた高麗青磁に、13世紀に生産された象嵌瓶や日本本土には見られない特殊な器形が含まれていることから、従来認識されていた将来時期や、経路の問題まで新たに再検討することができた。来年度はこれらの調査成果を整理し、「琉球出土の韓国陶磁－高麗末から朝鮮前期を中心に」というテーマで琉球王国による高麗青磁や朝鮮粉青の需要、流通、交易の問題について論文をまとめたい。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスの影響で2019年11月以降、引き続き現地調査、韓国や中国の窯跡調査、各機関での作品調査、各種シンポジウムへの参加ができず、研究を進めるにあたって遅れが生じている。
|
| Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルス感染症の影響で不確定要素が大きいものの、前年度から遅れが生じているふたつの方面について、同時に調査を進める予定である。ひとつは、高麗青磁の産地、編年および東アジア各地での流通、需要に関する最新の発掘調査成果を整理すること。もうひとつは、すでに現地調査を行い、出土データを集成した琉球出土の韓国陶磁（主に高麗末から朝鮮前期の青磁象嵌と粉青象嵌）について論文をまとめることである。また、新型コロナウィルスの状況が改善し次第、日本の各機関で行われる展覧会を参観調査し、資料を収集する。さらに、本場である韓国での調査や、同時代の中国青磁との影響関係も考察するため、中国青磁の窯址調査も行いたい。
|
| Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響により、２０１９年11月から中国や韓国の現地調査が不可能となり、さらに2020年の2月からは国内の調査も難しくなったためである。感染症の予防や拡散防止が可能となった場合、順次現地調査を行う。必要な図書などの購入も順次行いたい。
|
