2019 Fiscal Year Research-status Report
山岸章二の業績検証:写真プロデューサー山岸章二の日本写真史における役割とその影響
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18K12259
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
下西 進 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 研究員 (10760811)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 現代写真 / 写真史 / 写真表現 / 1960-70年代 / 編集者 / カメラ毎日 / 山岸章二 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は、大きく分けて三つの作業をおこなった。一つ目は前年度から引き続き、東京芸術大学に収蔵される山岸旧蔵資料(山岸章二(1928-1979年)および山岸享子(1940-2018年)の旧蔵書)の調査研究の継続である。 二つ目は、オーストリア・グラーツ市での調査である。グラーツ市にある写真ギャラリー「カメラ・オーストリア」にあるアーカイブ室において山岸章二の活動に関する文献を調査した上で、キュレーターのクリスティーネ・フリシンゲリーに直接話を聞き、急逝した山岸が参加予定だったグラーツでの国際シンポジウムの様子などを調査した。また、グラーツを拠点に活動する写真家古屋誠一に取材し、最晩年の山岸と交流した経緯について辿ることができた。 三つ目は、上記の調査等を報告する二つの研究発表である。発表の一つは、ロシア・サンクトペテルブルクで開催されたシンポジウム「第5回After Post-Photography」においてである。ここでは、山岸が雑誌『カメラ毎日』の編集や展覧会開催で優れた業績を残し、如何に活動の幅を国際的に広げていったかを論じた。第二の発表は、写真評論家飯沢耕太郎との対談形式の発表である。ここでは山岸の一連の活動を紹介した上で、本研究で得られた情報やこれまで一般には未公開だった山岸旧蔵資料の一部を公開した。 本研究では膨大な資料の調査やインタビュー取材により、これまで記録になかった山岸の足取りや国際的な高みを目指す山岸の意識が少しずつ明らかになってきた。今後の展望として、本研究で得られた成果とともに山岸旧蔵の未公開資料を公開し、山岸の活動の全体像を俯瞰視する展覧会の開催と研究発表を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
山岸旧蔵の書籍資料や山岸の手にした一次資料を精査することで、不正確だった山岸章二の足取りが一部明らかとなった。また、欧州の研究機関にアーカイブされる文献や現地の研究者を通じ、最晩年の山岸の具体的な活動を指し示す新たな情報を手に入れることができた。 さらに、シンポジウムの参加や研究発表により他の研究者との連携もでき、山岸と同時代に活躍した編集者や写真家たちの情報が得やすくなった。 令和元年度は、これらの作業により研究全体が進行したため、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、これまでにおこなった方法を引き続き継続して研究を進める。山岸と直接交流があった人物の取材調査や、山岸旧蔵の資料調査で拾い上げた情報を基に、山岸が『カメラ毎日』の編集や展覧会開催のためにどのような人物と交流し、いかなる方法で仕事を進めたのか詳細を明らかにする。 また、山岸と同時代に活躍した編集者たちの活動を追うことで、この時代の編集者やカメラ雑誌が担っていた背景を辿る。 令和2年度は本研究の最終年度となり、東京芸術大学に収蔵される山岸旧蔵資料やこれまで未公開だった山岸関連の一次資料を公開する展覧会をおこない、本研究で得られた成果を発表する予定である。
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Causes of Carryover |
令和元年度は海外での調査研究に加え、資料の複写や整理に人権費が発生したが、予定していた取材調査や調査研究が一部次年度に延期になった。このため、これらの旅費や人件費が次年度使用額となってしまった。 令和元年度に実行出来なかった取材調査や調査研究に加え、資料の複写等を次年度に実施する計画である。
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Research Products
(2 results)