2018 Fiscal Year Research-status Report
小津安二郎直筆資料群をはじめとする、映画一次資料の保存・展開に向けた基礎的研究
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18K12261
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Research Institution | Doshisha Women's College of Liberal Arts |
Principal Investigator |
宮本 明子 同志社女子大学, 表象文化学部, 助教 (60633419)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 映画史 / アーカイブ / 表象文化論 / 一次資料 / 小津安二郎 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度までに、小津安二郎監督作品の台本やノートなど、映画製作過程がうかがえる一次資料について調査を進めてきた。内容や保存状況、所蔵先もそれぞれ異なるこれらの資料を、今後望ましい状態で保存するにはどうしたらよいか。またデジタルアーカイブを経て、閲覧や研究その他に活用できるか。これらの方法を探る試みである。 初年度となる2018年度には、(1)先行する事例の参照と課題の調査(2)調査結果の公開――以上2点を進めた。(1)は、これまでの東京、三重、長野での取材に加えて、新たに京都府内での取材を行い、映画台本の修復・保存に取り組む企業、機関の事例を3件調査した。修復・保存の具体的な手順とともに、予算や時間などの課題を確認した。台本に限っても、小津の場合、比較的多くの点数が残されており書き込みの有無も異なっている。一定の予算、時間で取り組むには対象をどのように選択すべきか、熟考する必要がある。(2)は、研究発表と並行して、研究調査の集大成となる書籍『小津安二郎 大全』(朝日新聞出版)を刊行した。国内外の映画監督、俳優、評論家、作家、研究者へ取材や執筆を依頼し、小津とその作品について様々な観点が提示された。一次資料のデジタルデータ化、公開にあたっては今後も関係各者と検討が必要であるが、本書では一次資料も含めて小津の年譜、論考を再検討し、広く一般に紹介することができた。また、小津による絵や写真、8ミリフィルムの画像についても、関係各者から許諾を得て掲載することができた。これらの点で調査結果の公開にあたり一定の成果を上げられたといえる。今後は上に掲げた方法についてさらに具体的に検討し明らかにしていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記、2018年度に取り組む2点を進め、調査結果を書籍にまとめることができたことから、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
一次資料のデジタルデータ化や公開について考察する研究となるため、今後も関係各者との信頼関係のもと、その具体的な方法を検討してゆく。
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Causes of Carryover |
一部、インタビューを実施する予定であった調査先に変更が生じ、旅費について残余が生じた。次年度の旅費として適切に使用する。
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