2021 Fiscal Year Research-status Report
"Care" in a nursing home mediated by music - A time course study on the relational changes of the residents and the environment -
Project/Area Number |
18K12262
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
山本 里花 (生野里花) お茶の水女子大学, 基幹研究院, 基幹研究院研究員 (00793960)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 音楽療法 / 高齢者ホーム / 関係の媒体 / 共創 / ケア / COVID-19禍 |
Outline of Annual Research Achievements |
「関係の媒体としての音楽実践の中から生み出される高齢者『ケア』」について、以下の【実践】【検証】【共有】の実績を得た。 【実践】では、研究対象高齢者施設でのオンラインによる個人/家族音楽療法を行い、詳細な記録を残した。 【検証】では、1)実践記録の通時的俯瞰による検証を随時行なった。2)研究テーマ「ズレの散発」についてa 「個々の参加者は、場で何を経験していたのか」、b「場で、参加者たちは互いにどのように関わっていたのか」の視点から分析した。3)研究実践のCOVID禍における経過を検証した。4)研究テーマ「ケアの双方向性」について、他領域の音楽療法事例と関連づけて検証した。5)研究テーマ「他者の死への道のりに音楽で立ち会うこと」について、アートベイスト対話の方法による研究準備を進めた。6)音楽臨床実践の研究方法について、検討を進めた。 【共有】(【検証】と呼応)では、1)他職種、記録者、他の音楽療法士との意見交換、2)a「認知症を持つ高齢者との、音楽療法における”場の共創” -介護つき高齢者ホームでの『街角の音楽家』-」講義(日本音楽療法学会第 21 回学術大会講習会)、2)b「音楽の場の共創における”予期しないズレ”の様相の分析- 介護つき高齢者ホームでの音楽療法『街角の音楽家』より-」(投稿に向け執筆中)、3)「出勤できない音楽療法の臨床現場で経験したことと、そこから考えたこと-音楽療法はCOVID-19禍でどう変わるのか-」掲載(日本音楽療法学会誌vol.21(1))、4)「音楽をわかち合うということ-音楽療法と、”ともいき“-」講演(筑紫女学園大学公開講座「音楽によるともいきの試み」)、5)「ここのわ音楽臨床研究対話会」例会他にて対話、6) 第21回日本音楽療法学会自主シンポジウム「臨床で出会う研究のタネの育て方」にて企画及び話題提供を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度の研究活動の成果と進捗状況は以下である。 【実践】においては、COVID-19感染予防のため厳しい入構制限が行われている対象ホームにおいて、オンライン形式で復活した外部サービス音楽療法実践を、個人とその家族という形態で続行・進化させた。 【検証】においては、とくに、対象者の個人史・生活状況と認知構造の変化を包括的に捉え、本人にとっての「意味」をやりとりするオンライン個人音楽療法、さらに(面会不可のため)オンラインで参加する家族も加えて新たな「意味」を生み出していく経過が明らかになってきた。「ズレの散発」のテーマについては、まず、「音楽療法士が見た場」ではなく「個々の参加者が経験した場」を導き出すために、既存の質的研究手法と独自的探索手法を組み合わせ、そこから「わからなさ」をキーワードとした一定の結論を得ることができた。しかしその分析プロセスで、「個々の経験」では「関係の媒体」としての音楽実践の研究には一歩届かないことに気づき、さらに分析方法を発展させて「共創の関わり」の様相を描き出している。COVID禍における本研究の実践の経過についての検証は、もともとの研究テーマに直結するものではないが、そこから得た洞察は本研究の解釈や考察に多大な影響を及ぼしている。また、これら論理的実証手法による「関係の媒体としての音楽実践から生み出される相互的な『ケア』」研究プロセスを通じ、さらに、共通する経験事象を異なる角度から捉えた単なる多元的布置として理解する手法にも目を開かれるに至った。 【共有】においては、論文や発表による発信とそれへのフィードバック、主宰する研究会での対話から多くの果実を得ている。2)bと6)の研究は進捗を見せているが、共有には至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
以下を、この最終年度に推進する予定である。 【実践】引き続き実践を行い、臨床現場で直接経験することを、本研究の考察の照射に生かしていく。 【検証】論文2)bと、研究6)を続行する。 【共有】”共創学”、”Voice, A World Forum for Music Therapy”、日本音楽療法学会、各研究会などの場で投稿・発表・対話を進める。 また、芸術療法を扱う本研究のひとつの試みとして、研究テーマ「他者の死への道のりに音楽で立ち会うこと」の、言語・非言語(芸術媒体など)形式による対話的共有の方法を探る。
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Causes of Carryover |
COVID-19禍の影響による実践および研究状況の変化により、研究過程に変更が生じたため。
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