2018 Fiscal Year Research-status Report
共同体形成に与する身体感覚の研究:ニューカレドニアの舞踊団Wetrの振付を事例に
Project/Area Number |
18K12270
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
富田 大介 追手門学院大学, 社会学部, 准教授 (70623809)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 戦(戦士)の踊り |
Outline of Annual Research Achievements |
二年の課題実施期間の一年目にあたる本年度は、研究計画に即して、文献資料の読解(既読の文献資料の再読を含む)に注力した。体調不良のため、当初予定していた海外現地調査(ニューカレドニア)を断念せざるを得なかったことから、その分の時間を、文献資料の読解に加えて、これまでに録音や撮影してきた視聴覚資料の再チェックに充てた。 過去の文献資料や視聴覚資料の再チェックにおいてとりわけ入念に行なったのが、2015年をもって終刊となったカナク文化に関する定期刊行雑誌「モァヴェ(MWA VEE)」の再読、ならびに2016年にニューカレドニアで関係者へ聞き取りをした際の聴覚資料の再聴である。 中でも、読解においては、1997年のMWA VEE 17号に掲載されている二つの記事を重視し、訳出した。17号には、レイモン・アマンが同年に出版した著作が取り上げられ、Entretien avec Raymond Ammann の表題のもとにアマンのインタヴュー記事が、また、L’exemple du Wetr, groupe traditionnel de Lifou の表題のもとにリフ島の歌舞団ウェッチの創始者のひとりオバオ・ジハゼのインタヴュー記事が掲載されている。聴解においては、ADCKの芸術監督ギヨム・スラーへの聞き取りに、北プロヴァンスのカナクの舞踊とリフ島ウェッチのそれとを比較している件を認めた。一方に「禁欲的で飾り気がない(austere)」、他方に「見栄えのする(spectaculaire)」という表現が当てられており、テーマないし発端として、カナクの多くの踊りに「戦(guerre)」の状況や身振りがあったとしても、振付の違いすなわち部族の身体感覚(センス)によって、同胞ないし他の観衆の感情を鼓舞する度合いも異なることが窺われた。これは二年目の現地調査の焦点を定めるものとして、重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大阪北部地震や西日本豪雨の災害の直接的ないし間接的被害、またその時に抱えていた仕事の負荷や、研究室の復旧等のさまざまな疲労が秋冬にかけて心身の不調として表出してきたことにより、研究計画で当初予定していた海外現地調査(ニューカレドニア)に行くことが叶わなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の理由により、一年目の海外現地調査(ニューカレドニア)を実施することができなかったため、研究計画に記していた一年目と二年目の比較が困難となった。研究をリカバリーする方策として、二年目はニューカレドニアへの海外現地調査期間を計画より延長し、調査一回あたりの密度をあげる。
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Causes of Carryover |
表示の8,346円は、年度末の出張費用であるため、次年度4月に支出(使用)される。
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Remarks |
上記webページの(1)は、表象文化論学会第13回大会〔於:神戸大学〕で行われたパフォーマンスに関する研究代表者の試論。(2)は、(1)の上演をめぐる企画パネルに関する堀潤之氏の報告。(3)は、神戸大学大学院人間発達環境学研究科「学術Weeks2018:土方巽の舞踏譜―舞踏家・正朔による実践と舞踊研究の交点を探るワークショップ―」で講話した件に関する情報。
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Research Products
(9 results)