2018 Fiscal Year Research-status Report
Culture and Mobility in Japan's Cold War centering Zainichi Korean Literature
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18K12280
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
逆井 聡人 東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 講師 (50792404)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 冷戦 / 日本占領 / 朝鮮軍政 / 移動 / 在日朝鮮人 / 許南麒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年は、本プロジェクト一年目ということもあり、研究の基礎となる日本占領及び朝鮮軍政関係資料の整理、収集を行なった。当初の計画では、国立公文書館(NARA)及びハーバード大学イェンチン研究所での調査を検討していたが、事前調査をさらに進めたところ、スタンフォード大学図書館やイースト・アジア図書館、またカナダ・ブリティッシュコロンビア大学図書館の方がより本研究に資する資料群があることが分かり、計画を変更した。 まずスタンフォード大学図書館には日本及び朝鮮半島南部を占領していたアメリカ軍の兵士が個人所有していた写真及び映像資料が多数保管されている。例えばミズーリ出身のウィルキンソン一等兵が撮影した占領期日本の写真集があり、一般市民の生活状況や街の様子などが具に分かる。他にも、占領期朝鮮に赴いた宣教師団の写真は、宣教師たちと朝鮮の独立運動家との繋がりを示す資料である。またイースト・アジア図書館には、在日朝鮮人運動に関する日本語、英語、朝鮮語の書籍が収集されており、フーバー研究所のデジタル資料と照らし合わせながら調査を行えば、より広範な朝鮮人ディアスポラ研究が可能になることが分かった。 ブリティッシュコロンビア大学図書館では、かつては共産主義者であり、その後日本占領軍に加わり、レッドパージによって占領軍を追い出された後に、朝鮮問題を扱うジャーナリストになったという奇異な経歴を持つデヴィッド・コンデのコレクションが収録されている。その中には、コンデが傍聴した東京裁判の資料や、彼が冷戦期の東アジアについて書く上で作成したメモなどがある。彼が1966年に日本で出版した『アメリカー日本 アジアの枢軸』(青木出版)のもとになるものであり、様々な経験を経てきたコンデが見る東アジアの冷戦状況を見る上で重要な資料である。 国内では、詩人許南麒に関する資料収集を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目は北米での資料調査を中心に計画していたため、資料の所在確認及び資料収集という点においては、これまで把握していた所蔵箇所以外で資料群を見つけられたということが大きな成果であった。また、2018年6月にワシントン大学で開催されたTrans-Pacific Workshop、2019年3月にブリティッシュコロンビア大学で開催された3P Conferenceに参加したことで2年目、3年目に計画していた北米の日本近代文学、朝鮮近代文学研究者とのネットワークづくりが顕著に進んだことも1年目の成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目には、在日朝鮮人作家による文学作品の読解を中心的に行い、成果を発表する予定である。国際学会や国際シンポジウムに参加して発表することで、継続して研究ネットワーク構築に取り組みつつ、1年目で口頭発表した内容や新しい考察を積極的に論文化していく計画がある。また、3年目に計画している国際シンポジウムの企画を進めるために、開催場所や参加者などの人選、交渉も行なっていきたい。
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