2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K12283
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
尹 シセキ 大阪大学, 文学研究科, 助教 (80761410)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 内部発行 / 松本清張 / 三島由紀夫 / 社会派ミステリー / 文潔若 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は本課題の最終段階であり、まだ未発見の「内部発行」資料を調査しながら、これまでの成果をまとめることに重心を置いた。新型コロナウイルス感染症のため、中国への出張調査も、AASなど国際学会での研究発表も実現できなかったが、日本国内での調査とりわけデジタル資料を最大限に利用し、「内部発行」と日中文学関係史とのつながりについて検証を進めた。 まずは、中国における松本清張文学の翻訳と受容状況を、計量分析の手法で考察した。中国最大の読書サイトDoubanに掲載された松本清張の作品情報や、読者評価数、読者レビューなどのデータを収集し、整理した上で、KHCoderなどのソフトを用いて分析を行った。成果として、論文「二〇〇〇年以降の中国における松本清張の受容:Doubanの読者レビューをめぐる計量分析」(『松本清張研究』第二十三号、二〇二二年三月)を執筆した。 同時に、二〇二〇年度までに新中国の「内部発行」の概要や、三島由紀夫と松本清張の作品についての「内部発行」などについて資料を発掘し、口頭発表を行ったが、二〇二一年度は資料の補足と内容分析を加えた上、単著『社会派ミステリー・ブーム-日中大衆化社会と〈事件の物語〉』を完成した(二〇二二年四月刊行)。 ほかに、一九六〇年代から八〇年代までに日本文学の「内部発行」に携わった主要な翻訳家、文潔若の自伝やエッセイを広く調査し、『中国20世紀自伝回想録改題集』(中国文芸研究会創立50周年記念『野草』増刊号、二〇二二年六月刊行予定)に文潔若についての課題を寄稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、中国への出張調査も、AASなど国際学会での研究発表も実現できず、当初の予定よりやや遅れている。 一方、日本国内での調査とりわけデジタル資料を最大限に利用し、「内部発行」と日中文学関係史とのつながりについて検証し、単著『社会派ミステリー・ブーム-日中大衆化社会と〈事件の物語〉』の完成や、雑誌『松本清張研究』への投稿、さらに翻訳家文潔若についての改題の執筆を実現できた。感染症予防の行動制限の中、ある程度の成果を挙げることができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、新型コロナウイルス感染症の蔓延が収まり次第、中国への出張調査や、アメリカでの学会発表を実現したい。
2022年度は、新型コロナウイルス感染症の蔓延が収まり次第、中国への出張調査や、アメリカでの学会発表を実現したい。 ただし、海外出張が依然と難しい場合、現在把握した資料や、データベース、図書館の相互利用を最大限に活用し、かつ計量分析の新しい研究手法を取り入れることによって、「内部発行」された日本文学を考察する。 具体的には、一九六〇年代から八〇年代までに「内部発行」された作品のデータを整えた上、KH CoderやPythonなどのツールを利用して分析する。現在、計量分析の手法は最先端の人文学研究の手法として広く注目を集めている。「内部発行」の日本文学をめぐる計量分析を通じて、日中文学関係史ないし文化史の知られざる側面を提示できると思われる。研究成果は、日本比較文学会、もしくはオンラインで開催される国際学会にて公開したいと考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症のため、中国への出張調査も、AASなど国際学会での研究発表も実現できなかったため、2022年度にも継続的に資料調査を行い、研究成果を発表する必要がある。
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Research Products
(3 results)