2023 Fiscal Year Annual Research Report
A Study of Early Modern Lords' Tales and the Creation of Local Communities
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18K12288
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Research Institution | Momoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
南郷 晃子 (中島晃子) 桃山学院大学, 国際教養学部, 准教授 (40709812)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 地域写本 / 領主権力 / 地域伝承 / 近世説話 / 怪異譚 / 領主説話 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近世移行期および近代移行期における地域領主関連説話の形成・変容並びに説話による地域社会の創生について、考察することを目的とするものである。事実「らしさ」を有する「説話」を考察する上では、テクストをとりまく社会状況もしばしば説話背景として検証されるが、本研究においてはそれらを説話背景として捉えるのみでなく、説話自体が社会への働きかけたりえるものとして研究を進めた。すなわち地域の社会状況を背景に形成されているということのみならず、ひるがえって説話が地域社会を形成していくという運動でもあるという位置付けとともに、当該時期の領主説話の考察を進めた。 特に体制が形成され、社会が変動する移行期における説話を特に取り上げた。 最終年度は、これまでの研究で扱ってきた「オサカベ」伝承および「お花」伝承に関連しながら取りこぼした東北の伝承に焦点を当て、まとめることができた。これら成果については、2024年度中に「猪苗代の城化物――亀姫と堀主水」(コラム)、「『老媼茶話』の魔術」(論考)として共著書における公表を予定している。前者は姫路城のオサカベ伝承を踏まえながら現れる猪苗代城の「亀姫」が、加藤明成の家臣で失脚の末一族郎党ともに壮絶な死を遂げる堀主水に関する語りと近接する要素を持つことを示し、後者においてはその堀主水の前に現れる悪霊「お花」伝承を成り立たせる説話世界について考察した。 また、本研究テーマ全体に関する成果の集大成として、現在単著の準備を進めている。同書においては「オサカベ」や「オサゴ」また「お花」といった女性の神霊が、領主関連説話のうちに現れてくる実態を明らかにしながら、それが社会状況の変動に対応する運動となっていること、そして説話における「語り直し」を通じて、近世化、さらには地域社会の近代化の再解釈が行われることを明らかにする。
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