2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K12290
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
松田 聡 岡山大学, 教育学研究科, 准教授 (60806412)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 大伴家持 / 歌日記 / 万葉集 / 万葉集巻六 / 万葉集末四巻 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は万葉集末四巻(巻17~20)の日記文学的側面を考究しようとするものであるが、その解明の糸口として歌の内容だけでなく、「散文」的な性格を持つ題詞・左注や歌の配列に着目するものである。 令和元年度は本研究の一部として以下の①②の論文を発表した。①授刀寮散禁の歌―万葉集巻六の論として―(『万葉集研究』第39集2019・11塙書房)、②万葉集巻六と天平十六年―末四巻を視野に―(『岡山大学国語研究』第34号2020・3)。本研究を進める過程で、昨年度は家持歌日記の性格を持つ末四巻とそれ以前の巻、とりわけ巻六との近縁性に気づくに至った。そこでこれらの論文では、巻六が歌を配列することで「歴史」を語ろうとする「散文的な文脈」を持つことに着目し、この点との関連において末四巻の散文的性格に光を当てようと試みた。 一方、令和元年度は本研究に関わるものとして次のような3本の口頭発表を行った。①授刀寮散禁の歌―反歌を中心に―(岡山大学国語研究会大会2019/11/9)、②万葉集巻二十における散文的表現―防人歌蒐集時の家持独詠歌をめぐって―(早稲田大学国文学会2019年度秋季大会2019/11/30)、③末四巻の日記性 ―散文的表現をめぐって― (美夫君志会例会2019/12/8)。このうち、①は既に論文化したが、②③については令和2年度にその一部を論文化する予定である。なお、更級日記の上洛の記との関連で大伴家持の方法を考察した論文を執筆したが、これも令和2年度に発表の予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度にやや遅れていた分を含め、これまでの研究を論文化して発表することができた。想定していた以上の関連分野について考察が及び、論文2本を形にすることができたが、うち『万葉集研究』に発表した論考はある程度まとまった分量の原稿(原稿用紙100枚程度)であったので、万葉集の散文的性格をめぐる種々の問題に幅広く言及することができた。一方、研究発表3本のうち、2本は次につながるものである。ゆえに当初の計画よりは進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、まず更級日記を視野に入れた万葉集の論文を公刊し(武蔵野書院より論集を刊行予定)、更に前年度に口頭発表した研究の一部を論文化する。また、今年度中に「家持における〈幻視〉の問題」というテーマで研究を予定しているが(美夫君志会11月例会)、本年度の研究を通して、更に対象とする問題の範囲を広げることを考えている。 なお、最終的に本研究で5~6本程度の論文を公表することを目指している。
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Research Products
(5 results)