2023 Fiscal Year Research-status Report
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18K12307
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Research Institution | Morioka College |
Principal Investigator |
紅林 健志 盛岡大学, 文学部, 准教授 (10817654)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 仮作軍記 / 近世小説 / 軍記 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年は仮作軍記の後代への影響について検討した。特に『大友真鳥実記』(元文二年〈1737〉刊)と『大伴金道忠孝図会』(前編嘉永二年〈1849〉、後編嘉永三年刊)との比較研究を行った。その結果以下のことが明らかになった。 『大伴金道忠孝図会』の作者好華堂野亭は『楠正行戦功図会』『義経勲功図会』『木曽義仲勲功図会』等の図会もの読本を著している。そこでは俗説なども利用している。また、通俗軍談の利用も指摘できる。そういう点で、通俗軍談の影響を受けた虚構の軍記である仮作軍記は野亭の嗜好にかなうものであった。『大友真鳥実記』の利用も自然なものである。また、対外戦争を経て、朝敵を退治し国内の安定を図るという『大友真鳥実記』の内容が幕末の時代背景と対応することも読本化に至った一因と考えられる。内容的には『大友真鳥実記』の大筋に従うが、より整合性がとれたものとなっている。一方で殺された女性が幽霊となって大友真鳥に祟る場面など、後期読本にしばしば見られる趣向が導入され、類型的になっている。『大友真鳥実記』にあった知的遊戯的な側面は小さくなっている。 その他、『大友真鳥実記』には、大伴金道が毎日稲胡麻を跳び越え修行する場面がある。これは忍者の修行として、現在人口に膾炙しているが、近代以前の文献では報告されていない。『大友真鳥実記』は文献に載る早い例である。『大友真鳥実記』が後世の忍者の描き方に影響を与えた可能性もある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は調査なども再開することができたが、数年にわたるコロナウイルス感染症による遅れを十分にとりもどすには至らなかったことが主な原因である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の成果をまとめ、必要な補足調査を行い、報告書を完成させる。
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Causes of Carryover |
文献調査で使用することを予定していたが、本務の関係で文献調査に行く日程が確保できなかったことが主な理由である。文献調査の遅れに伴い、他の調査も滞ったため、次年度使用額が生じてしまった。幸い、4月から職務上の立場に変更が生じたこともあり、使用する日程が確保できるはずである。
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