2019 Fiscal Year Research-status Report
Aldous Huxleyのフィクションおよび思索的随筆に見られる語りの手法
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18K12317
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
猪熊 恵子 東京医科歯科大学, 教養部, 准教授 (00508369)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 小説 / 映画 / 叙事詩 / 語り |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の実施計画書で明らかにした通り、本研究ではまずはハクスリーという枠組みをいったん外してみることとし、より広い角度から「語り」の問題を検討するために、「小説」と「映画」という多ジャンルの混交について考察を行った。これはハクスリー作品の多くが映画化されること、またハクスリー自身の中期の作品『猿とエッセンス』(_Ape and Essence_ 1948)の第二部がレーゼ・シナリオの形態をとっていること、また何よりもハクスリーの作品が「視覚」による認識の困難/可能性について思索をめぐらすものである点を考慮したためである。この点の検討の結果として、「映画」と「小説」というジャンル混交についての書籍『イギリス文学と映画』を他の研究者と共同で執筆し、2019年9月に出版した。 また、「小説」というジャンル、またはその語りのもつ特異性を考察するため、通常は「小説」とは対照的ジャンルと考えられることの多い「叙事詩」に 関しても考察し、この点について、20世紀後半のスコットランド人作家アラスター・グレイの『ラナーク』を研究の対象とする論文を執筆し、書籍『二〇世紀「英国」小説の展開』のなかの一章として完成させ、2020年3月に出版した。これら二点の研究の完成の向けて多くの力を注いだため、元々の研究計画の内容から若干ずれることとなったが、上記の成果を踏まえたうえで、2020年度以降、改めてハクスリー作品の考察に注力する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ハクスリー作品読解の準備として、上の概要に既述した二点の業績を完成させたが、それらに時間を取られたことで作品読解に十分な時間が取れなかったことが理由の一つである。また2019年度末にかけて、ハクスリーが『クローム・イエロー』執筆の舞台とした場所等を実際に訪れ、イギリスで現地調査を行う予定であったが、新型コロナウィルス感染拡大等により、この海外での資料収集ができなかったことがもう一つの理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」に述べた書籍執筆で得られた知見をもとに、あらためてハクスリー作品の読み込みと資料の収集、論文作成に取り掛かる予定である。
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Causes of Carryover |
研究概要および2020年度以降の研究計画でも明らかにした通り、予定していた海外での資料収集その他が行えなかったことが最大の理由である。コロナウィルス感染拡大状況が予断を許さないため、2020年度以降の計画も未確定ではあるが、状況が落ち着き次第イギリスでの資料収集を行いたいと考えている。
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Research Products
(4 results)