2020 Fiscal Year Research-status Report
Aldous Huxleyのフィクションおよび思索的随筆に見られる語りの手法
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18K12317
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
猪熊 恵子 東京医科歯科大学, 教養部, 准教授 (00508369)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 小説 / 語り / 誕生 / 生誕 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度に発表した2冊の共著において、「小説」ジャンルそのものの成り立ちを「叙事詩」や「映画」などの他ジャンルとの対照においてとらえ直した。この成果をもとに2020年度にはハクスリー作品の精読に入る予定であったが、新型コロナウィルス感染拡大により、研究計画の変更を余儀なくされた。これは、2020年度にイギリスでの資料収集や現地での研究ができなかったこと、最終年度となる2021年度もイギリス渡航の目途がたたないこと、の二点による軌道修正である。 具体的には、ハクスリーの初期作品『クローム・イエロー』の舞台となる屋敷のモデル、Garsington Manorを訪れるなどの研究調査計画が実現不可能であること、およびその他のハクスリー作品についても同様の調査研究が難しいことから、ハクスリーの作品を一つ一つ取り上げて精読する研究方法を取りやめた。代わりに、『素晴らしい新世界』において問題化された「生命の誕生」というテーマを中心に据え、大きな歴史的流れのなかで、改めて小説が「誕生」を描くことの意義/意味を再考することとした。 このテーマ変更に基づき、2020年10月には、ディケンズ・フェロウシップのシンポジウムで他3名の研究者と共同発表を行い、18世紀小説から20世紀小説に至るまでの歴史的変遷を射程にとらえ、そのなかで小説がいかにして「誕生」を描いてきたか/またはその描出の難しさに直面して来たか、を論じた。また、合わせてディケンズの小説における「誕生」描写の不思議にも焦点を当てた論文を執筆し、Athena Pressから英語で出版された書籍_Dickens and the Anatomy of Evil: Sesquicentennial Essays_の一章として2020年12月に出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルス感染拡大を受け、イギリスでの現地調査・資料収集、および研究の目途が立たなかったため、当初の研究計画通りに進めることはできなかったが、上記の通り研究計画の軌道修正を行い、そのテーマのもとにシンポジウム発表および論文執筆を開始した。このまま最終年度にそれらの成果をさらにまとめて新たな論文を発表する見通しである。
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Strategy for Future Research Activity |
既述した修正版の研究計画に合わせ、18世紀から20世紀まで時代を広く取り、小説が「生誕」や「誕生」を描くことの難しさに焦点を当て、論文を執筆する予定である。この執筆を通して、ハクスリー作品の独自性を通時的観点からとらえ直し、他の作品との比較対象のなかであぶりだしたいと考える。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大により、予定していたイギリスへの渡航および現地での資料収集が不可能となったため、使用予定額に大幅な変更が生じたため。 最終年度には、パソコン周辺機器やデータ保存用外付けドライブ等による使用を予定している。
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Research Products
(2 results)