2020 Fiscal Year Annual Research Report
The Links between the Irish Literary Revival and James Joyce: Demythologization of National Female Iconography
Project/Area Number |
18K12318
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
結城 史郎 富山大学, 学術研究部人文科学系, 准教授 (00757346)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 文芸復興運動 / 女性表象の脱神話化 / ジェイムズ・ジョイス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、W. B. イェイツ、J. M. シング、レイディ・グレゴリーら文芸復興家とジェイムズ・ジョイスの関りについて、対立というこれまでの評価に対し、連動という観点で見直すため、国家をめぐる女性表象を取りあげ、それぞれの脱神話化を検証した。 そのため2018年度においては、W. B. イェイツとジェイムズ・ジョイスの女性像という観点から、両作家の連動を考察した。イェイツは劇『キャスリーン・ニ・フーリハン』(1902) において、イギリスからの独立を目指すための血の犠牲を賛美した。そのような民族主義に異議を唱えたのがジョイスであった。しかしイェイツは後期の作品において、民族主義から離反し、アイルランドの女性表象を脱神話化してみせた。イェイツと民族主義の関係はフランケンシュタインとモンスターの関係に等しいことも明らかにした。 2019年度においては、J. M. シングとジェイズ・ジョイスの女性像という観点から、シングの一連の作品とジョイスとの連動を考察した。シングの『海に騎り行く者たち』(1904) は、苛烈な自然に忍従する老婆を主人公として民族主義的な色彩の濃い『キャスリーン・ニ・フーリハン』への批判となっている。その他、『谷間の影』(1903) や『西国の伊達男』など、女性が抱える現実やセクシュアリティの描写において、シングの女性像はジョイスに影響するところが大であった。さらにアイルランド神話に基づいた『哀しみのディアドラ』(1909)においても、ジョイスとの連動を明らかにした。 2020年度においては、レイディ・グレゴリーとジョイスの女性像という観点から、両者の連動を考察した。そしてグレゴリーは劇『ダーヴォギラ』(1907) や『グラーニア』(1912) において、イェイツやシングと同じく、ジョイスと連動する自意識的なモダンな女性を描いていたことを明らかにした。
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