2018 Fiscal Year Research-status Report
Crisis, Affect and Body in Contemporary American Literature and Culture
Project/Area Number |
18K12319
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
ハーン小路 恭子 金沢大学, 外国語教育系, 准教授 (30733563)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | アメリカ文学 / アメリカ文化 / 危機 / 情動 / 南部 / 人種隔離 / 人種暴力 |
Outline of Annual Research Achievements |
H30年度前半は研究に必要な研究書・論文等資料の拡充を集中的に行った。基礎研究に必要な文献の一部は確保できた。 8月にJames Baldwinのドキュメンタリー映画 I Am Not Your Negroと危機、情動、アダプテーションに関する論文を執筆し、本年刊行される論集において出版予定である。執筆過程で本研究課題についてより細かな時期を設定する必要性を認識し、モダニズム、ハーレム・ルネサンスと人種隔離の時代(1920~40年代)、公民権運動期(1960年代)、および現代(1980年代以降)の三つの時代で分析対象を再検討することとした。 9月には日本ウィリアム・フォークナー協会第21回全国大会において1940年代の南部女性作家についての研究発表を行い、その成果は5月に査読つき研究論文「レベル・ガールの系譜――南部女性文学における反逆する娘像と連帯のナラティブ」として季刊『フォークナー』第21号(松柏社)として出版される。Baldwinのケースと同じく、この論文執筆が扱う時代について再考をうながす契機となった。 同じく9月には申請書に記入の通り、訳書『説教したがる男たち』を刊行した。年度中にフェミニズムについてのシンポジウムや学会を行うことはスケジュールの都合でかなわなかったが、今年度6月にソルニットに関するイベントを行う予定である。 また、当初予定していた通り、本課題の出発点をなす危機や情動を扱う論文 “Violence, Storm, and the South in Beyonce’s Lemonade”を執筆し、米国の査読誌LIT: Literature Interpretation Theoryに採択された。出版に必要な直しを年度終わりにかけて行い、さきごろ提出した。同論文はH31年5月ごろ刊行予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は精力的に資料収集、学会発表、論文執筆を行い、研究に必要な資料をそろえ、課題のうちの個別研究に関して学会において有用なフィードバックを得るとともに、本課題に関わりうる査読付き論文を3本執筆した。その過程で課題が扱うべき時代や作家について重要な再検討を行った結果、今後の研究の向かうべき方向性がより明確になった。当初の分析対象は、大きく分けてトニ・モリスン、ビヨンセ、フットボールカルチャーのみであったが、研究実績の概要欄で書いたように、今後はモダニズム、ハーレム・ルネサンスと人種隔離の時代(1920~40年代)、公民権運動期(1960年代)、および現代(1980年代以降)の三つの時代に分析対象を拡大していくこととした。これによりより多くの時代、作家を研究対象としてより広いスパンで本研究課題に取り組む必要性は生じたが、課題そのものの内容はより充実したものとなったと考えている。現在のペースで研究を続けていければ、毎年研究発表を行いその結果を1,2本の論文として執筆することは十分に可能であると考えられるため、全体として本課題はおおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度はまずは引き続き資料収集を集中的に行う。さらに当初の予定通り国際学会での発表を念頭に置いて、アブストラクトを作成する。発表先は現在のところPAMLA(11月開催)を考えており、アブストラクトの〆切が6月上旬であるため、4月から6月は集中してこの準備に取り組む。分析対象としてはまだ先行研究読解が進んでいないトニ・モリスンに変え、現代のアニメーションなどを検討中である。PAMLAに採択されなかった場合は、3月のACLA(American Comparative Literature Association)を検討し、9月までにアブストラクトを作成する。6月以降はモリスンの戯曲の課題により多くの時間を割きたい。また、新たな分析対象としてハーレム・ルネサンス期の作家、作品についても研究を開始する。具体的には、この4月に日本アメリカ文学会中部支部で行われたハーレム・ルネサンスについてのシンポジウムでの発表(Jean ToomerのCaneについてのもの)を8月末までに論文に直し、ハーレム・ルネサンス期の人種暴力と危機が文化やジャンルに与えた影響について考えてみたい。この研究は前年度の南部女性作家についての論考とある程度対をなすものとして考えている。8月末に仕上げる論文については、ハーレム・ルネサンスの論集において出版される予定だが、どちらかといえば作家紹介の要素が強い内容となることが予想されるため、より本課題に深くかかわる形で同一テーマを検討し、もう一本論文を執筆することも視野に入れている。年度末までにそちらが書きあがれば、インデックスつきの黒人文学および南部文学研究の査読誌に投稿したいと考えている。当初から予定していたフットボール・カルチャーについても資料収集と分析を開始し、次年度カルチュラル・タイフーンでの発表をめざし、12月までにアブストラクトを仕上げたい。
|
Causes of Carryover |
物品購入の端数により572円の残高が生じた。引き続き次年度の物品購入に充当したい。
|