2019 Fiscal Year Research-status Report
Crisis, Affect and Body in Contemporary American Literature and Culture
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18K12319
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
ハーン小路 恭子 金沢大学, 外国語教育系, 准教授 (30733563)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アメリカ文学 / アメリカ文化 / 危機 / 情動 / 人種 / ディスアビリティ / エコクリティシズム / 自然 |
Outline of Annual Research Achievements |
R1年度前半は、研究課題に関連する2本の査読論文、「レベル・ガールの系譜―南部女性文学における反逆する娘像と連帯のナラティブ」、および“Violence, Storm, and the South in Beyonce’s Lemonade”を出版し、課題についての研究成果を発表することができた。4月には第36回日本アメリカ文学会中部支部大会シンポジウム「ハーレム・ルネサンスとは何か」において「ハーレムルネサンスと南部表象―Jean Toomer, Caneを中心に」というテーマで発表し、ハーレムルネサンス期の「危機」の表象に関して考察を深めた。発表の成果は2020年出版の論集に掲載される。6月には研究発表“Disability and Prosthetic Interdependency in How to Train Your Dragon (Film)”のアブストラクトが国際学会(PAMLA 2019)に採択され、11月に発表を行うはずであったが、「現在までの進捗状況」で後述するように、参加できなかった。ただしこのトピックは今回の課題に関して新しい鍵概念としてでてきたdisabilityの問題を考察する上で重要であるため、次年度も引き続き考察を続け、論文執筆を試みる。1月には国際学会(Cultural Typhoon 2020)にいまひとつのアブストラクト「Eco-cripping Elsa--「アナと雪の女王」シリーズにおけるコンタクト・ゾーンとしての身体」が採択された。ただしこちらはコロナウィルスの流行を受け、大会が中止となった。こちらの課題も危機意識とdisability概念を考察する上で重要であり、disablityと自然環境のかかわりを考察するeco-crip theoryにも踏み込んだという点でも中心的な課題であるため、引き続け検討を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究に必要な研究書・論文等資料の拡充については、令和元年度も前年度に引き続き十分に行うことができた。disability studies関連の文献を中心として、基礎研究に必要な文献を引き続き確保できた。これまでの研究成果を査読論文の形で世に出すことができた。課題内容を拡充させるうえで重要な概念として、人種やジェンダーに加えてdisablity、自然や環境問題を新たに考察する必要性がでてきたため、2本の研究発表アブストラクトを執筆し、ともに国際学会に採択された。 ただし、8月末に膝の半月板を負傷し、二度にわたって入院・手術をし、そののちには12月初めまで療養のため病休を取ることになったため、11月に予定していた国際学会PAMLAでの発表はキャンセルせざるを得なかった。今年度中にはこの負傷と療養を受けて研究室に行けない時期が長くあり、収集した資料を分析する作業に滞りがでたため、残念ながら予定していたほどには研究を進めることができなかったといえる。 ただし、新たにdisability概念、および自然や環境をめぐる危機というきわめて同時代的なトピックを取り込んだこと自体は研究課題にとっては大きな収穫であった。予定していた研究発表の課題には引き続き取り組み、最終年度の研究につなげていきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに述べたようにキャンセルとなった、disabilityと環境をテーマとした2本の研究発表については、今後も引き続き取り組んでいく予定である。コロナウイルスの影響を受け、2020年度中に研究発表を行うことはあまり現実的ではないかもしれないので、査読論文として執筆することを考えている。もともとの発表予定はいずれも国際学会であったことから、英語論文として執筆し、アニメーションスタディーズの査読誌に送ることを検討している。 また、令和2年度5月には、研究課題に関連して九州アメリカ文学会のシンポジウムで「Jesmyn Ward, Sing, Unburied, Sing におけるダーティ・サウス・エコロジー」というテーマで発表予定であったが、こちらもコロナ禍で大会が中止となってしまった。現状としては、このシンポジウムを2021年度アメリカ文学会全国大会に移すことが検討されているが、研究成果を今年度中にある程度まとめる必要性に鑑みると、年度中の論文執筆をめざすことも検討すべきであると考えている。こちらについてはある程度前年度中に資料をそろえることができたたため、早い時期に執筆できるかもしれないと考えている。ジャーナルについてはMississippi Quarterlyを検討している。 これまで2年間の研究を経て、研究成果が徐々に論文として出版され蓄積されつつあるなか、今後はこれらの成果をひとまとめにして単著にすることが本研究課題のゴールとなる。最終年度中の単著出版は現実的とはいえないが、個々の発表アブストラクトを論文として執筆する作業を粛々と続けていく所存である。
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Causes of Carryover |
2019年度8月末に膝の半月板を負傷し、9月、10月と二度の入院・手術をし、その後は自宅療養していたため、11月に発表予定であったアメリカ合衆国カリフォルニア州サンディエゴでの国際学会(PAMLA 2019)に行くことができなかった。使用予定であった旅費を使うことなく年度を終えたため、使用額に変更が生じた。
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