2020 Fiscal Year Research-status Report
Crisis, Affect and Body in Contemporary American Literature and Culture
Project/Area Number |
18K12319
|
Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
ハーン小路 恭子 専修大学, 国際コミュニケーション学部, 准教授 (30733563)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | アメリカ文学 / アメリカ文化 / 危機 / 情動 / 南部文学 / ポップカルチャー / アメリカ映画 / 身体 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度はコロナ禍にて学会発表が軒並み中止となったが、その発表を誌上シンポジウムとして出版したり、旧論を現在の社会的危機(警察暴力とBLM)に合わせて論集に寄稿するといった機会が得られた。それを通して、「社会的、政治的危機が文学作品、文化的創作物の形式やジャンルにどのような変化をもたらすか」という本研究課題により深く取り組むことができるようになった。研究成果を単著にまとめて出版する計画を本格化させ、単著に入るべきトピックや作品の精査に注力した。その過程で扱う作品にかなり変化が生じ、最終的に4-5のトピック/作品にまで絞り込んだ。 まずは平成30年度にLiterature Interpretation Theory誌で出版したビヨンセのアルバム『レモネード』についての論文を、日本語に翻訳しつつ拡充する作業を開始した。続いて、「レベル・ガールの系譜――南部女性文学における反逆する娘像と連帯のナラティブ」として季刊『フォークナー』第21号(松柏社)として出版された論文も、単著に加えるべくリバイズの作業に入った。アニメーション作品『ヒックとドラゴン』における障害と動物をめぐる論文ががカルチュラル・スタディーズ学会の年次大会、カルチュラル・タイフーンに採択されたため、現在発表に向けて準備を行っている。『ヒックとドラゴン』論執筆に際し、エコクリティシズムと障害学関連の文献に広く当たったことから、自然、動物、障害をめぐる危機を、現代アメリカ文学・文化における重要な事象とみなして集中的に扱うべきだという結論に達した。現在は、南部作家Jesmyn Wardの長編小説『歌え、葬られし者たちよ、歌え』(2013)やDelia Owensの『ザリガニの住むところ』(2020)を中心に構想を広げている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和2年度はコロナウィルス流行を受け、本研究課題に関連して年度内に予定していた3つの学会発表がすべて中止となった。そのため本研究課題は停滞を強いられ、本来令和3年度内に終了予定であったが、2021年度まで延長することになった。
|
Strategy for Future Research Activity |
「アメリカ文学・文化における危機の感覚と、それが促す形式・ジャンル上の変化」をテーマとした単著の、令和4年度中の出版をめざす。今年度はすでに論文化されているもの二本を単著用に拡充し書き直す作業を中心的に進める(出版社はすでに見つけている状態である)。令和2年度の中止となった学会発表のうちふたつを今年度中に別の学会発表(カルチュラルタイフーンおよびアメリカ文学学会全国大会)として組み直してあり、オンライン開催になる可能性はあるにしろ、発表の機会とフィードバックが得られる可能性は高い。発表後はこれらの論文を迅速に二章分の内容としてリライトしていく予定である。年度末までにできれば合計五章分の執筆を終え、出版に備えたい。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍で年度内に予定していた学会発表がすべて中止となり、予定していた学会費用が未使用に終わったほか、全体として研究活動に停滞が生じて、文献購入の手続きも滞った。今後は単著の研究計画に注力し、その準備に未使用額を充当していく予定である。活発に資料購入を行うとともに、学会発表についても、対面開催となった場合には旅費として使用する予定である。
|