2020 Fiscal Year Research-status Report
Counter-Irishness in the Literature of the Irish Free State (1922-37): Yeats, Joyce, O'Connor, and F. Stuart
Project/Area Number |
18K12327
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Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
諏訪 友亮 実践女子大学, 文学部, 講師 (30633408)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | W・B・イェイツ / アイルランド文学 / 詩 / 国民国家 / 対抗的国民性 / 近代 / 反近代 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究の国民性に関わるものとして、アイルランドの詩人W・B・イェイツの前近代的な要素の作品への反映が、世界文学として流通し、アメリカ南部の詩人たちによって自分たちの文脈に合わせて受容されたことを検証した。後期イェイツは、自身の思考の多くを新生アイルランドの国民国家形成にまつわる事柄に費やしてきたが、彼の国民像には、前近代的な農村社会を理想化し、反イギリス(反宗主国)、反工業主義を志向する一面があったことを確認した。しかしながら、主にイタリアの教育制度をモデルとして、アイルランドの教育の近代化を押しすすめるなど、イェイツが使う「近代」(modern)という言葉には、常に両義的な意味合いがあったことは、これまでの研究で明らかにしている。にもかかわらず、アメリカ南部出身の詩人たち(ヒュージティブ、アグレリアン、ニュー・クリティック)は、作家の伝記的要素、文化的背景を排除するという方針に反し、イェイツの中に過度に前近代性(アイルランドの農村社会、民話・伝説の伝承など)を読み込み、その庇護者に祭り上げた。そしてこれは、南部白人としてプランテーションに基づいた農村共同体を理想とする、受け入れ文化側のニーズに合致していたからであることを議論した。
こうしたことからも、イェイツの対抗的国民性には、反近代的要素も多く含まれ(そう評価され)、これらの反近代性がイェイツの中で近代擁護の姿勢と和解不能な形で対立しあうのではなく、混交していたことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度末から2020年度にかけ、コロナ対応により教育や大学業務に費やす時間が大幅に増加、研究に割けるエフォートの低下が顕著になった。所属大学の図書館は半分程度の期間で閉館し、他大学図書館にいたっては外部利用者の使用を受け付けないなど、研究環境としては大変に厳しい1年だった。2020年度は、これまで収集した資料の整理、およびそれ以前から継続していた関連分野の研究に留まらざるを得なかったため、研究の進捗に遅れが出ている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果を整理したうえで、当該研究の目的である、アイルランドの詩人W・B・イェイツが自由国期(1922-39)および戦間期において、保守とリベラルを奇妙に結びつけたことの検証について一定の解答を示したい。具体的にはアイルランドのファシズム、権威主義、自由主義といった概念を改めて確認し、それらとの比較からイェイツの立ち位置を明らかにしていく予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度は、コロナ禍により学会出張など移動を要する機会が全くなくなり、申請時に想定したほど経費がかからなかったからである。また、新しい所属先では研究図書費がつくことも、研究費を消費しなかった理由として挙げられる。次年度は、引き続き本研究に必要なデータベースの契約、図書と物品の購入に使用していきたい。
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[Book] 緑の信管と緑の庭園2021
Author(s)
岩永 弘人、諏訪 友亮、谷本 佳子
Total Pages
431
Publisher
音羽書房鶴見書店
ISBN
978-4-7553-0423-1