2022 Fiscal Year Annual Research Report
Counter-Irishness in the Literature of the Irish Free State (1922-37): Yeats, Joyce, O'Connor, and F. Stuart
Project/Area Number |
18K12327
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Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
諏訪 友亮 実践女子大学, 文学部, 講師 (30633408)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | イェイツ / アイルランド文学 / アイルランド自由国 / ファシズム / 青シャツ隊 / 国民国家 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は、未だに新型コロナウィルスの影響を受けながらも、本研究課題の中心となるテーマについて研究を行えた。それは、詩人W・B・イェイツが、当時の主流となっていたアイルランドの国民性に対して対抗する代替的な国民性を提示しようとしていたことである。特に、イェイツとアイルランドのローカル版ファシズム集団である青シャツ隊(the Blueshirts)との関係や共通点を検証し、イェイツと青シャツ隊が政権与党となったデ・ヴァレラ率いる政党フィアナ・フォイル(Fianna Fail)に対立する過程を考察した。彼らはともに、デ・ヴァレラがまとっていた共産主義的傾向に批判的であり、多数派の意見が通る選挙という制度を否定し、ファシズム的な専制による統治を擁護した。そうした共通点から、1930年代半ばに両者は急速に接近、イェイツは青シャツ隊のために行進曲の歌詞を作詞している。イェイツはすぐに青シャツ隊に対して幻滅し、行進にそぐわない詞へ改作を行うのだが、少なくとも1920年代のムッソリーニによるイタリアの政権奪取から1930年代の途中まで、少数エリートによって運営され政治的自由(自由な選挙)を抑圧した統治を支持していたことを裏づけた。 国内外のイェイツ研究においてイェイツがファシストであったかは評価が分かれており、その点で、今年度の研究は時代を限定しながらも、彼がファシズムという政治的傾向と一致していたことを再確認したことに意義があった。 2022年度の成果としては、本研究に直接関わる研究論文1本のほか、間接的に関わる研究論文1本、口頭発表2本が挙げられる。 今後は本研究を発展させ、イェイツをはじめとした英語圏モダニストの一部が、政治的・経済的自由と芸術表現の自由(題材に制限なく創作活動を営める自由)を区別し、前者を敵視しながらファシスト勢力と結びついていたことを明らかにしていきたい。
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