2018 Fiscal Year Research-status Report
アメリカ文学と視覚芸術の交差:20世紀中葉の文学と写真
Project/Area Number |
18K12329
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
宮澤 直美 京都産業大学, 外国語学部, 准教授 (50633286)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アメリカ文学 / 視覚芸術 / 写真 / カポーティ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度前半は、トルーマン・カポーティの文学作品と、フォト・ジャーナリズム、写真との関係を中心に研究を行なった。まず、写真家アンリ・カルティエ-ブレッソンやリチャード・アヴェドンとの関わりを整理し、その上で、新たな文学ジャンルとして彼が構想したノンフィクション・ノベル『冷血』(In Cold Blood, 1966)の分析に取り組んだ。本作品を、同時代に台頭したフォト・ジャーナリズムとの関係の中で再考する試みだ。その成果の一部は、米国雑誌Arizona Quarterly 75.2( 2019年夏)に掲載されることが決定した。アメリカ文学・文化研究の国際的学術雑誌として権威ある本雑誌への掲載は、本研究の大きな成果といえる。 また、当初の計画通り、ガートルード・スタイン、フィッツジェラルド、ヘミングウェイなどの作家を取り上げ、写真と文学の関係を包括的に把握するための作業にも着手した。様々な作家作品を視覚芸術という視点から再検討する作業を行なう過程で浮上してきたのが、ウラジミール・ナボコフと視覚芸術という着眼点であった。そこで、平成30年度後半は、ナボコフのロシア時代の作品を中心に、写真という視点から精読する作業を進めた。 平成31年2月には米国、ニューヨーク公立図書館貴重書部門、バーグ・コレクションでの調査を行なった。その際には、カポーティに関する資料だけでなく、ナボコフの手書き資料などにも調査の範囲を広げ、貴重な資料を数多く収集することができた。構想中の論文をさらに多角的に深める上でのヒントを多く得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画よりも早い段階で、カポーティの論文をまとめることができ、その成果として論文の掲載が決定した。さらに、ナボコフを視覚芸術の視点から読み解くという切り口を渡米前に見いだすことができたため、アメリカでの資料調査が非常に効率的に進んだ。これまではカメラを用いての資料収集が許可されていなかった資料館において、資料の写真撮影が許されたため、限られた時間を有効活用し効率的に資料収集することができた。 ナボコフと視覚芸術という新しいテーマが具体化し、次年度に取り込む研究内容を明確に設定できたという点においても、平成30年度の進展は計画以上に大きかった。以上の点から、計画以上に進展しているを選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、米国調査で得た資料の分析を進めながら、ナボコフに関する分析を論文としてまとめる計画である。まずは、小説『絶望』(Despair)など1930年代のナボコフの作品を中心に、視覚芸術と小説、異なる表現形態が作品の中で互いに補完し合う様を検証する。これまでの研究で、視覚芸術と文学の連動性に着目してきたデリダ、リカルドゥー、メルロ・ポンティなどの議論を理解する必要を感じた。これらの哲学的分析を踏まえる作業にも、次年度から本格的に着手する。
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Causes of Carryover |
当初計画では平成30年8月にニューヨーク公立図書館Stephen A. Schwarzman Building貴重書部門での調査を予定していたが、夏季は日本での資料分析と論文執筆を優先したため、渡米調査を平成31年2月に変更した。夏季と冬季の航空チケット代の違いで、旅費が計画よりも減少したことが、次年度使用額が生じた大きな理由である。また英語論文のネイティブ・チェックを人件費・謝金として予定していたが、渡米時期の変更に伴って、論文の完成時期が後ろにずれることになったのも原因である。 次年度には、英語論文を完成させ英語論文のネイティブ・チェック費用分の人件費・謝金として執行する計画である。
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