2018 Fiscal Year Research-status Report
「境界」のアイルランド文学―20世紀前半のアルスターを中心に
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18K12332
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
中村 仁美 立命館大学, 文学部, 准教授 (10739212)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アイルランド文学 / アルスター / 南北分割 / 国境地帯 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は2015年度からの三年間、課題「文学におけるアイルランド南北分割の総合的研究」(日本学術振興会科学研究費補助金若手研究B、課題番号15K16707)を遂行してきた。その発展形である本課題においては、未だ探究の余地を残す20世紀前半のアルスター北アイルランドを描いた文学作品(おもに詩と小説)にかかわる考察を深化させたいと考えている。とりわけ作品内に表れる「境界」意識について論究し、南北分割やアイルランドの独立が20世紀前半のアルスター/北アイルランドの文学的想像力に与えたインパクトを明るみにすることを目指している。 一年目である本年度は、主に関連資料の精読と情報の整理を行い、得られた研究成果を学会等の場で発表した。2018年夏にはダブリン、イニスキーン、ベルファストにて調査と資料収集を行い、主にパトリック・カヴァナ(Patrick Kavanagh)とマイケル・マクラヴァティ(Michael McLaverty)の創作活動について改めて理解を深めた。とりわけUniversity College DublinにあるPatrick Kavanagh Archiveとモナハン州のPatrick Kavanagh Resource Centreへの訪問では多くの貴重資料の閲覧にあたることができた。そこで得られた資料も含め、論究した内容を2019年3月に京都大学吉田キャンパスで開催された国際シンポジウムで口頭発表にまとめた。多くの課題も得られ、学術論文の執筆と発表に向けて橋脚を据えた一年となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度、本研究課題はおおむね順調に進展したと言えるが、当初「研究実施計画」に記した通りには研究成果を発表する機会が得られなかったことが反省点である。2019年3月21日に京都大学吉田キャンパスにて行われた "Irish Literature in the British Context: Voices from Kyoto" での口頭発表では、多くの課題を得ることができた。次年度は執筆中の論考発表のため、計画的に高い意識を持って研究成果の発信に尽力したい。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度と2020年度の本研究課題の遂行について、以下活動方針を記したい。 (1)研究課題の積極的な発表とその見直し:2018年度に収集した資料に基づく考察をまとめ、学会での単独口頭発表やその後の論文執筆に注力する。 (2)Patrick Kavanagh研究の発展:本研究課題でも扱っているPatrick Kavanaghの研究に集中し、まとまった研究成果を残したいと考えている。 (3)アイルランドでの研究活動の更なる発展:本研究では国境などの特定の場所の表象を扱うため、現地での研究活動を更に充実させたい。また、現地で開催される学会や行事等への参加も今後視野に入れたい。
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Causes of Carryover |
当初の予想よりも「物品費」や「その他」の項目に経費がかからなったことが原因と考えられる。次年度より「物品費」に充填したいと考える。
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