2019 Fiscal Year Research-status Report
「境界」のアイルランド文学―20世紀前半のアルスターを中心に
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18K12332
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
中村 仁美 立命館大学, 文学部, 准教授 (10739212)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アイルランド文学 / アルスター / 南北分割 / 国境地帯 / 北アイルランド文学 / 文学と場所 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の遂行二年目にあたる2019年度は、研究計画の通り、収集した資料をもとにした学術論文執筆に費やした年となった。 2019年夏の滞在では、ダブリンを拠点に資料の閲覧および収集と調査を行った。アイルランド国立図書館やユニバーシティ・カレッジ・ダブリンで主に詩人パトリック・カヴァナ(Patrick Kavanagh)関連資料の閲覧と収集にあたったほか、ドニゴールとファーマナのアイルランド/北アイルランド国境地帯を訪問した。 独立に伴うアイルランド島の南北分割と国境制定は、北と南双方の作家たちの創作にどのような影響をもたらしたのだろうか。かねてより取り組んでいたものも含め、本年度は計二件の学術論文を執筆し、個々の事例と向き合った。取り上げた作家は、20世紀前半から半ばにかけて北アイルランドを舞台とした作品を発表したマイケル・マクラヴァティ(Michael McLaverty)、シャン・ブロック(Shan Bullock)、そしてサム・ハンナ・ベル(Sam Hanna Bell)である。論のなかでは主題を「境界」意識に限定せず、それぞれの出自や作風を解することから、20世紀前半のアルスターないし北アイルランドの文学的風土を探究することを心掛けた。 また2019年12月には、日本アイルランド協会第27回アイルランド研究年次大会でシンポジウム「アルスターの詩人たちと『伝統』」を企画・開催し、そのなかでカヴァナの伝統意識に関する単独口頭発表を行った。新たな関心や課題を見出すことができ、研究の裾野が広がった一年であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度、本研究課題は引き続き、おおむね順調になされたと言える。予定通りアイルランドでの現地調査を実施し、学術論文二件、学会での単独口頭発表一件の成果を残すことができた。次年度はそのなかで得られた課題の省察からはじめたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の本研究課題の遂行について、以下活動方針を記したい。 (1)本研究課題の振り返り:最終年度となるため、自身の成果と課題を総括し、アプローチの有効性や次なる課題の展望をまとめておきたい。 (2)パトリック・カヴァナとその周辺の知的サークルに関する研究の継続:ノーベル文学賞受賞者であるW. B. イェイツ(W. B. Yeats)とシェイマス・ヒーニー(Seamus Heaney)のあいだの世代の文学活動について、さらなる理解に努めたい。
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