2020 Fiscal Year Research-status Report
Narrating Democracy -- African American Literature as a Field of Practice
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18K12336
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Research Institution | Nagoya College |
Principal Investigator |
平沼 公子 名古屋短期大学, 英語コミュニケーション学科, 准教授 (90736612)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アフリカ系アメリカ文学 / 合衆国公民権運動 / 人種理論 / アメリカ文学 / 黒人文学 / ラディカリズム / 公民権運動 / 英米文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
計画に必要な修正を加えつつ、以下の通り進めた。
1. 論文「奴隷制を語る/読む私 -- Arna BontempsのBlack Thunderと文学作品における奴隷制」(『アメリカ文学評論』第26号、pp.58-66. 筑波アメリカ文学会) を発表。当該年度の研究計画の一部として、冷戦期以前のアフリカ系アメリカ文学・批評におけるラディカルな思想をどう評価するべきか考察する視点に基づき、Arna BontempsのBlack Thunderを分析した。Black Thunderは、奴隷制を体験していない世代が描く奴隷制についての小説であるにも関わらず、新奴隷制体験記とはカテゴライズされず、またハーレム・ルネサンス期とは発表時期のズレがあるにも関わらず、ハーレム・ルネサンス期の作品と呼ばれることが多い、アフリカ系アメリカ文学史上どのジャンルに位置付けられるのか不透明な作品であった。本論文では、その批評・文学史上の曖昧さに注目し、本作品の文学史上の腑分けの作業の難しさが、本作品の描く階級闘争における人種を超えた連帯の可能性によるものだと結論づけた。
上記の論文発表のほかは当該年度に公開したものはないが、本論文執筆のための調査とその研究成果を元に、アフリカ系アメリカ文学批評における冷戦期以降の言説が、戦前のラディカルな階級闘争と人種問題が切り結ばれる場としてのアフリカ系アメリカ文学・文壇という役割を希薄化してきた過程を精査する作業を行なった。当該年度は、以下の進捗状況にも記すようにコロナ禍の影響もあり学会発表は困難であったが、論文発表および次年度の論文発表に向けた史料整理と原稿推敲を重点的に行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1. 前年度からの課題である「先行研究の精査およびスミソニアン黒人史博物館におけるアーカイブ調査」は実施不可能であった。
2. 1.と関連し、海外での研究発表も予定していたが、実施不可能となった。
1. 2.の事由として、学会のオンライン化などにより比較的参加が容易になったとはいえ、コロナウイルスの感染拡大による海外渡航が実施不可能な事態が継続していることが挙げられる。昨年度に引き続き、国内にてアクセス可能な資料および史料を元に調査をすすめ、研究発表と論文執筆を行った。また、本務校図書館への電子データベースの導入など、科研費を用いた研究環境の整備等も行なった。しかしながら、前年度に続き再び1.2.の活動に用いるはずであった次年度繰越し金が生じた点を鑑み、やや遅れていると判断をする。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 2018年度~2020年度に遂行できなかったスミソニアン黒人史博物館、米国議会図書館およびシカゴ歴史博物館でのアーカイブ調査を行い、これまでの研究成果に照らし合わせ、1950年代後半から1960年代における公民権運動期の思想を精査する。
2. 1. の上で、2019年度および2020年度の計画を繰越する形で、アメリカ文学史においてある意味空白時代となっている1970年代に、のちにアフリカ系アメリカ人文学作家として活躍していく人々がどのような教育を受け、どのような思想の変遷を辿ったのかを、米国議会図書館およびシカゴ歴史博物館でのアーカイブ調査にて明らかにする。また、海外渡航が不可能な中で手に入れてきた史料を整理するとともに、本研究を相対的にまとめ、出版物として発表する段階に取り掛かる。
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Causes of Carryover |
主に国内外への出張が不可能となったために、旅費の支出が大幅に減ったことが理由である。 当該年度は、研究計画に変更を加えつつ、学会参加費等に支出したが、次年度以降も現状が継続するようであれば、更にオンラインを活用して参加できる学会への参加、および本務校の図書館のデータベースの充実を図ることによって研究を完了させるつもりである。
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Research Products
(1 results)