2020 Fiscal Year Research-status Report
19世紀後半の精神医学、犯罪学、文学─エクトール・マロの社会派小説から─
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18K12341
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
梅澤 礼 富山大学, 学術研究部人文科学系, 准教授 (50748978)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マロ / 犯罪 / 文明 / 原始 / 光と闇 |
Outline of Annual Research Achievements |
本来であれば研究の最終年度にあたる2019年度は、マロの『クロード医師』、『良心』、『正義』、『共犯者』における犯罪者描写の特徴を分析し、これが同時代の犯罪学理論とはむしろ逆行していたことを示すことをめざしていた。その点について言えば、2019年度は国内外での調査をもとに、『共犯者』以外の3作品において、犯罪者が原始人にたとえられていること、またその苦悩を描くにあたり光と闇のコントラストが用いられていることを発見し、その結果を、2019年10月、みずから開催した国際ワークショップで発表したほか、12月には発表をもとにしたフランス語論文が紀要に掲載された。 こうして本課題(2018-2019年度)での研究は、マロの描く女性と犯罪について、19世紀文学における女性を専門とする研究者の最終講義(2020年3月、大阪)に出席し意見交換をすることで終了する予定であった。ところがコロナウイルスの感染拡大により、最終講義が2020年7月に延期されるということになり、その出張と意見交換のために本研究は延長を申請することとなった。 その2020年7月、当該講義は最終的に中止となり、予定されていた出張は取りやめとなった。そのかわり、マロの別の作品について分析を進め、2020年12月に日本フランス語フランス文学会中部支部大会で研究発表「エクトール・マロの二極化した世界─『ジュリエットの結婚』『義母』(1874)を中心に─」を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述のように、予定していた講義が中止となったことから、意見交換は行えなかった。また、マロの作品の翻訳出版の計画も、昨年度の国際ワークショップの成果をもとにした国際共著の計画も、出版業界の状況や国際情勢により進まずにいる。 とはいえ、新たな発見をし学会で発表をすることができたこと、またその発見を次なる研究テーマ「戰、金、愛─エクトール・マロの大人向け作品における近代社会とその犠牲者たちの描写(21K00433)」につなげられたことから、全体的な進捗状況については、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
延期となった出張と意見交換のために期間を延長したが、その出張が取りやめとなったことから、かわりに学会で新たな発見について発表をした。その内容をもとに現在フランス語論文Le monde bipolaire chez Hector Malot. Autour du Mariage de Juliette et Une Belle-mereを執筆している。この執筆を終えることで、本課題での研究は終了とする。
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Causes of Carryover |
2020年1月に予定されていた講演会が2021年5月に延期となり、それに伴い出張費と物品購入が後ろ倒しになったために再度延長を申請した。その後オンラインでの実施が決定されたため、オンラインでの講演に必要な物品に充てる予定である。
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