2021 Fiscal Year Research-status Report
Representation of the creative space in Modern France : library, darkroom, atelier and salon
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18K12344
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
福田 美雪 (寺嶋美雪) 青山学院大学, 文学部, 准教授 (90632737)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 芸術家小説 / 自然主義文学 / エドモン・ド・ゴンクール / エミール・ゾラ / ジャポニスム / パリ万国博覧会 / 音楽サロン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画は、19世紀フランス文学における「私的空間」の諸相を、「暗室・アトリエ・書斎」をキーワードに解き明かすことを目的としてきた。2つ目のテーマ、「アトリエ」については、前年度に参加したリアリズム文学研究会シンポジウム「室内 私空間の近代」において、バルザック、ゴンクール兄弟、ゾラにおける芸術家小説とアトリエ表象の分析を試み、一定の成果を得た。2021年度には、美術批評家・収集家・小説家として活動したゴンクール兄弟の作品を、「文学者の書斎/収集家の室内」というテーマで分析した。 具体的には、ゴンクール兄弟がロココ美術収集家、18世紀歴史小説家としての前半生の活動に区切りをつけ、日本美術研究の先駆者としてジャポニスムをパリに広める活動に軸足を移した経緯、また収集家としてオートゥイユの自邸をひとつの「邸宅美術館」として演出し、公的・私的性格を併せ持つ写実主義文学のサロンとして開放した過程を検証した。分析の対象として選んだのは、芸術家小説『マネット・サロモン』(1866)、自邸のルポルタージュ『芸術家の家』(1881)、そして『日記』(1850-1896)における、画家のアトリエや収集家の書斎の描写である。また、第二回パリ万国博覧会(1867)から第三回パリ万国博覧会(1878)に至る、一連のジャポニスム批評、たとえばフィリップ・ビュルテイ、エルネスト・シェノー、ルイ・ゴンスらのテクストとエドモン・ド・ゴンクールの関係性についても検討した。 これらの成果は、『人文学のレッスン』(2022年、水声社)所収の「ジャポニスムへの情熱 ゴンクールの『日記』に記された美術革命」に発表した。また、リアリズム文学研究会の2021年度シンポジウム「旅するリアリズム 近代文学における外部世界との接触」にもコメンテーターとして参加、2度のシンポジウムの出版企画が進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、前年度と同様に新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け、渡仏して国際学会や研究会、文献調査などを実施することはできなかった。したがって、国内外の出張計画は遂行していない。しかしながら、あらゆる学会・研究会活動がオンラインに切り替わったことで、毎月のように文学系・美術史系のシンポジウムにzoomで参加できたことは、大きな収穫であった。 とくにパリ第三大学/CNRS(フランス国立科学研究センター)主催の「ゾラ・セミナー」は、オンラインによる研究活動配信に積極的であり、自然主義文学関連の最新の研究動向を、雑誌ベースではなくリアルタイムで視聴できたことは、これまでにない経験である。 また、本研究計画の成果発表の場としてリアリズム文学研究会のシンポジウム、武蔵大学人文学部の企画『人文学のレッスン』に参加したが、どちらも本研究課題の代表者による主導ではないが、新たに出版計画が進行しており、2022年度~2023年度にかけて刊行される見込みである。この2つの出版企画においては、エドモン・ド・ゴンクールの『芸術家の家』(1881)における収集家の室内表象と、挿絵画家ギュスターヴ・ドレによる美術品としての文学作品リバイバルについて執筆する予定であり、これらを本研究計画の集大成としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の最終年度となる2022年度には、おそらく後半でパリでの学会・研究会参加が可能になると考えられる。もしも可能であれば、長年に及ぶ改修工事を経てドレフュス記念館として再オープンした、ゾラのメダンの邸宅や、パリ日本文化会館、ギメ美術館の図書館など、フランス国立図書館Gallicaのデータベースでは見られない資料を参照する機会を設けたい。 いずれにせよ、今後はリモートによる研究活動を前提として、移動や宿泊に伴うコストや時間的なロスを削減し、オンラインベースで効率的に資料調査・成果発表を精力的に行う予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大に伴い、渡仏が事実上困難となったため、国外出張は引き続き取りやめとなった。また、日本フランス文学会をはじめとする学会もすべてオンラインとなったため、あらかじめ旅費に計上していた金額は、実際には執行できなかった。 2022年度には、いくつかの学会がオンラインから対面開催に戻る見込みである。また、所属機関において適切な申請手続きをとれば、条件付きで海外への出張も可能となることを確認した。夏季にフランス出張を行い、本研究計画の出張費として執行する予定である。
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Research Products
(2 results)