2023 Fiscal Year Annual Research Report
Representation of the creative space in Modern France : library, darkroom, atelier and salon
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18K12344
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
福田 美雪 (寺嶋美雪) 青山学院大学, 文学部, 教授 (90632737)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | エミール・ゾラ / オノレ・ド・バルザック / エドモン・ド・ゴンクール / ヴィオレ・ル・デュク / ナダール / エドゥアール・マネ / パリ万国博覧会 / ジャポニスム |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の最終年度においては、複数回延期を余儀なくされた国外出張を2度に分けて実施することができた。2023年8月のパリ滞在中には、2021年に再オープンしたメダンのゾラ邸に新設されたドレフュス事件記念館を訪れた。また、展示企画の中核を担ったアラン・パジェス氏(パリ第三大学名誉教授)にインタビューを行い、ドレフュス事件におけるゾラのアンガージュマンについての歴史的意義や最新の研究動向を確認した。これによって、出版業者や政治家と緩やかに連帯するメダンのサロンが、反ユダヤ主義に抗する象徴的なトポスとなったこと、21世紀のいまも現在進行形で「共同体の記憶の場」としての歴史的役割を担っていることが明らかになった。 2024年2月の2度目のパリ滞在では、2019年に改装され再オープンしたバルザックの家を訪れ、『人間喜劇』の草稿や人物相関図の展示を通して、「私空間」や「私生活」という主題の重要性を再確認した。さらにルネ=ピエール・コラン氏(リヨン第二大学名誉教授)に面談を申込み、ゾラと同時代の自然主義文学者と象徴主義の影響関係について、さらにフランスの若手研究者の動向について貴重な示唆をいただいた。 これらの成果を踏まえて、2023年度に2本の研究論文を執筆した。「ウジェーヌ・ルーゴンの雄弁と沈黙――第二帝政下における「権威」と「自由」をめぐって」(『仏語仏文学研究』第58号掲載予定)、および「近代フランスの芸術家小説が描く「創造の場」――アトリエという公的・私的空間をめぐって」(共著『室内・旅論集』幻戯書房より刊行予定)である。前者ではゾラの小説における「私空間」の表現について、後者はバルザック、ゴンクール、ゾラの作品におけるアトリエ描写について論じた。研究期間を通じて、書斎、暗室、アトリエ、サロンがそれぞれ芸術の生成空間として重要な主題であることが明らかになった。
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